芸能考房

本当は仲がいい?前田忠明と梨元勝

芸能リポーターの前田忠明氏が、出演する番組『とくダネ!』(フジテレビ系)を3週間程度休業するという。心臓のバイパス手術を受けることがその理由だ。「大動脈瘤がちょっとふくらんできまして、それを切除します。それを人工血管に変えると同時に心臓の血管が詰まりやすいということでバイパスを作る手術をすることになりました」(番組で前田忠明氏)

筆者はその番組を普段よく見ていたわけではないが、昨年の暮れに、雑誌の取材で梨元勝氏から前田氏の健康状態については聞いていた。
「でもね、前田さんもやたら体のことを言いに来るんだよね。ボケてるわけじゃないんだろうけどねえ。『俺は心臓悪いんだけど、お前も悪いんだろう?』って。一緒にすんなよ(笑)」

これだけでは、梨元氏が不謹慎な言い方であるように思えるかもしれない。もとより、現場主義の梨元氏は、デスク的仕事をしている前田氏を以前から徹底批判している。

しかし、人間の関係というのはうわべの表現で判断できるほど単純なものではない。梨元氏がフジテレビの番組を降板してTBSの番組に出演することになった時、フジテレビから後任を誰か紹介してくれと言われ、推したのが前田氏だったという。情報デスク・前田忠明の産みの親は実は梨元勝なのである。前田氏が、記者としては後輩である梨元氏にいくらこきおろされても、一言も弁解しないのはそれも理由かもしれない。

梨元氏は、2人の関係についてこう語っていた。

「はじまりは、31年前にボクが『ヤングレディ』で駆け出しで、前田さんが隣の『女性自身』でね。同じ音羽の講談社と光文社ですから。

こんなことがあったんですよ。会社の前に寿司屋があるんですけど、ある日入ったら、いきなりデスクが挨拶もしないで、『梨元、お前昨夜は俺の悪口で盛り上がったな』って言う。どうしてバレたんだろう。そのとき一緒にいたカメラマンは絶対に言わないと思うし、誰だろうって思い出したら、たしか前田忠明が横にいたんだよね(笑)

隣の編集部ですよ。会社が違うんだから。普通、ヨソの会社の人間に告げ口なんかするかって。でも彼はそういうことをするんだ。チクリの前田っていうのは有名でね。そこからボクとの歴史は始まるんです(笑)」

(笑)という文字が入っていることでおわかりと思うが、梨元氏は怒りや憎しみを込めて話しているわけではなく、むしろ楽しそうだった。昔の話だからということもあるのだろうが、同業者としての相互尊重や友情がそこにはかいま見えた。なぜなら、本当に嫌っている人間のことなら話題にもしないものだ。少なくとも「歴史は始まる」などという言い方はしない。

何より、梨元氏は前田氏を紹介した根拠として、こうも語っていた。

「前田さんは企画力があるんで、番組では必要とされているんですよ」

取材の梨元、企画の前田、ということらしい。梨元氏は、「東京スポーツ」などの媒体で、「また競い合ってやっていこうよ」と前田氏にエールを送っている。そう語れる仲間やエピソードがあることが筆者には羨ましく思えた。

かつてのジャイアント馬場とアントニオ猪木ではないが、周囲には仲が悪いように見せていても、本当のところは当事者にしかわからないことはある。前田氏には一日も早く快復していただき、今度は前田氏からの逆襲で我々を楽しませて欲しい。

なお、梨元氏は『紙の爆弾』(エスエル出版会発行・鹿砦社発売)という雑誌で健筆をふるっているが、同誌バックナンバー(2008年3月号)で前田氏や他のリポーターについて語っているインタビュー記事を読むことができる。
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