『孤愁人』はデビュー15周年と寿引退への花道だった森昌子

『孤愁人』は森昌子にとって15周年記念、47枚目のシングルリリースである。サイン入りピンナップのジャケット体裁にし、作詞は大御所の石本美由起。まさにメモリアルなリリースにふさわしい作り方だったが、少なくとも森昌子本人にとっては、その華々しさは歌手生活の「終わりの始まり」にするつもりだったようである。

「’86森昌子15周年」と印字されたジャケットは、めずらしく巻き三つ折りになっている。彼女のサイン入りピンナップが入ったためである。

たのきんトリオの田原俊彦や近藤真彦など、売り出し中の若いタレントがそうした体裁にすることはあるが、森昌子は表が写真とタイトル、裏が歌詞というオーソドックスなジャケットばかりだった。そのめずらしさは、「15周年」に力を入れていることがファンにもわかった。

もっとも、森昌子はこの時期、山口百恵のように結婚と同時に引退を考えていた。

「優等生の森昌子でいなければいけない、いつも完壁に歌わなければならないというプレッシャーに、私はもう耐えられなくなっていました。森田昌子としての人生を取り戻す日を、ひたすら待ち望んでいたのです。歌手をやめることに、未練はありません。その気持ちを伝えると、森さんはわかってくれました」(『明日へ』)

「15周年」という「区切り」は、少なくとも森昌子本人にとって、新たな歌手人生の始まりではなく、手仕舞いの意味だったのである。

『孤愁人』(1986.5.2)

孤愁人
孤愁人/二人づれ
作詞者 石本美由起
作曲・編曲者 A面:三木たかし B面:徳久広司(編曲:池多孝春)
キャニオン

スポンサーリンク↓

『愛傷歌』に引き続き、この歌の詞を提供した石本美由起も、阿久悠言うところの「主流」である。古賀政男や船村徹、市川昭介らの作曲家と、美空ひばり、島倉千代子、都はるみらの楽曲を手がけてきた。森昌子は15週年に、また歌謡史に残る大御所との仕事をしたことになる。歌手人生としてこれほど恵まれていることはない。もちろん、彼女の実力があればこその話だが。

初めて森昌子の楽曲を手がけたB面作曲の徳久広司は、人気ドラマ『寺内貫太郎一家2』の挿入歌『北へ帰ろう』で歌手デビューし注目された。ハスキー声のペーソスあふれる歌いっぷりが当時話題になった。

ただ、徳久広司は本来は小林亜星に師事した作曲家である。石川さゆりや長山洋子など演歌の作曲を手がけている。

森昌子の曲を手がけたのは、その演歌の実績か、小林亜星のブッキングか、どちらなのだろうか。

それはじんせい…

それはじんせい…

  • 作者: 森 昌子
  • 出版社/メーカー: 主婦と生活社
  • 発売日: 2011/12/16
  • メディア: 単行本

スポンサーリンク↓