『化粧』は桜田淳子33枚目のシングルリリースである。レコード会社や桜田淳子サイドが心に期すものがあったのか、デビュー以来、初めての元旦リリースとなった。女優としては『ミュージカル時代劇 清水次郎長』に初出演。いよいよ演技の面白さを知り、女優としての可能性が膨らんできた時期だった。
『化粧』のジャケットにおける桜田淳子は、すっかり大人の女性である。全体的にセピア色がかかっている。裏には過去のリリースを収録した『マイ・ロード』の宣伝が書かれている。
詞・曲とも中島みゆきの提供である。中島みゆきは、これまでにも『しあわせ芝居』(1977.11.5)『追いかけてヨコハマ』(1978.2.25) 『20才になれば』(1978.9.5)などを手がけている。
今回も桜田淳子自らが中島みゆきに強く「歌いたい」と希望して実現した。
「花の中三トリオ」時代は、「わたしは まだ 少女なのかな」と歌っていた彼女も、ここでは中島イズムで「あたし」と歌っている。
セールスは前の『神戸で逢えたら』の1万枚は上回って7.5万枚までのびた。それでも、20~30万枚はコンスタントに売っていたかつての勢いは残念ながら戻らなかった。
結果的に、桜田淳子が中島みゆきから詞や曲を提供してもらった最後のシングルになった。2人の相性がよくないのか、気持ちのほうが女優にシフトしていたのか、それはわからない。もしかしたら、第一線で歌う流行歌手としての区切りを中島みゆきの歌でつける、という気持ちが桜田淳子自身にあったのだろうか。
『化粧』(1981.1.1)
化粧/夢追い
作詞者 A面:中島みゆき B面:麻木かおる
作曲・編曲者 A面:中島みゆき(編曲:大村雅朗) B面:小田裕一郎(編曲:信田かずお)
ビクター音楽産業
女優としてはこの時期、『ミュージカル時代劇 清水次郎長』に杉良太郎、ジュディ・オング、井上順らと出演した。
いままでの現代劇映画やドラマとは違った板の上の芝居、しかも時代劇でミュージカル。彼女にとっては全く新しい世界である。仕事として新鮮さを感じたことだろう。これによってますます女優としての仕事にやりがいを感じるようになったのではないか。
一方、これは歌手・桜田淳子としての出演だが、『爆笑ヤンヤン時代劇 幕末花の美剣士たち』にはたのきんトリオ、郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎、松田聖子らと出演している。
郷ひろみら「新御三家」はともかくとして、たのきんトリオや松田聖子は明らかに自分よりも後の世代のタレントたちである。もしかしたら、桜田淳子はこのへんで改めて歌手としての世代交代を感じたかもしれない。
この時期は、歌手から女優への転換という心の動きがあったのではないかと思われる。
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