『ロックンロール・ウィドウ』を歌い『古都』を撮影した山口百恵

『ロックンロール・ウィドウ』は、山口百恵にとってちょうど30枚目のシングルリリースになる。「花の中三トリオ」でデビューした彼女も、とうとう30枚という区切りの数字に到達したわけだ。特徴あるタイトルは今も口ずさめる人が多いヒット曲となった。そして、恒例の映画は文芸路線の『古都』を悲願だった松竹で撮ることになった。

なぜ悲願か。もともと堀威夫が持ち込んだ映画の企画が松竹だったからである。そのときは「花の中三トリオ」の中で最後尾だった彼女に対してゴーサインが出ず、結局東宝が拾ってくれた。それが今回の引退前の最後の作品でやっと実現したのである。終電ギリギリ駆け込み乗車といったところか。

30枚目のシングルは、オリコン順位をさらにひとつ上げて3位、レコード売り上げは30万枚を超えた。『ザ・ベストテン』でも1位になった。これで通算27作目のオリコン・ベストテン入り。

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この記録は最後の『一恵』で29まで伸ばした。小泉今日子に破られるまで、女性歌手としての新記録だった。唯一彼女にとっては頂上に立つ記録だったが、記録は破られるためにある。その道を開いた貢献が消えるわけではない。

『ロックンロール・ウィドウ』(1980.05.21)

ロックンロール・ウィドウ
ロックンロール・ウィドウ/アポカリプス・ラブ
作詞者 阿木耀子
作曲・編曲者 宇崎竜童(編曲:萩田光雄)
CBS・ソニー

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ちょうどこの頃、山口百恵は最後の主演映画『古都』の撮影に入っていた。77年の『泥だらけの純情』以来、横須賀ツッパリソングを歌う山口百恵に合わせて青春映画も作られていたが、最後はまた松竹で映画化されたことのある文芸リメイク作品だった。

しかも、最初の『伊豆の踊子』同様川端康成原作に戻った。すでに引退を決めていたために、最後は国民的映画で終わろうというホリ・プロサイドの意向があったようだ。

だが、せっかく青春映画を撮り始めて、脱アイドルでオンリーワンのの道筋を作りかけていたのにそれを結実させず、“今さら”国民的映画で終わってしまったことについて、「映画的後退」の最後だと失望を込めた厳しい批評もある(『女優山口百恵』)。

こうしてみると山口百恵というのは、本人は完全燃焼していても、素材的には「未完」ならぬ自ら完成を断ち切った「不完」で引退した大器だったのではないだろうか。

大賞とは縁がなかった無冠の歌手。新しい路線を確立し損ねた映画女優。大賞が取れなかったことで悔し泣きをしていたという彼女にとって、歌手として「無冠」は心残りでないはずがない。

しかし、それをあえて振り切り、どこかの女性柔道家のように何足ものわらじを未練がましく抱くことはなく寿完全引退を貫いた。その深い思いこそが、以降の彼女を伝説化させたのだろう。

古都 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • メディア: DVD

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