『白樺日記』で「兄」を想う森昌子

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『白樺日記』。森昌子の5枚目のリリースである。「白樺」というと千昌夫の『北国の春』を思い出してしまうが、『白樺日記』当時の森昌子にピッタリの歌である。「お兄さん」と甘えていた人が初恋の相手だったことに気づき、もう都会へ行ってしまったことを切なく思っている歌である。

森昌子は実生活ではひとりっ子のため、いかにも森昌子自身にありそうな設定だ。森昌子自身、年上の人が好みらしく、夢中になった男性タレントは、当時の時点で年が倍近く違う『飛び出せ!青春』主演のレッツ・ビギン!こと村野武範だったと芸能雑誌で述べている。

『白樺日記』(1973.8.25)

白樺日記
白樺日記/お兄さんみたいな人
作詞者A面:阿久悠 B面:荒木あい子
作曲・編曲者A面:遠藤実 B面:新井利昌
ミノルフォン

B面は、これまた「お兄さんみたいな人」への思いを歌っている。

今度は「上級生の あのひと」である。ただし、こちらはまだ別れずに同じ学校の先輩・後輩の関係として進行中という設定だ。森昌子は、初恋の相手が中学のバレーボール部でキャプテンを務めていた先輩であり、デビューした時に励ましてくれたと自著『明日へ』で書いている。

キャプテンとの間柄は、歌のように肩を並べて歩くような関係ではなかったようだが、この歌を歌う昌子に、先輩とこうなれればいいなあという夢想はあったかもしれない。

なお、B面の歌詞は芸能雑誌『平凡』で募集したものである。応募者が昌子の中学生活を知っていたかどうかは定かではないが、ファンにとって昌子は、古き良き時代のおくゆかしい女子中学生に見えたのだろう。

記事の字数の関係で少しずれてしまったが、この1973年は、森昌子が映画に初めて出演した年である。桜田淳子や山口百恵に比べると、歌へのウエイトが高いイメージのある森昌子だが、映画の出演歴もある。

1973年2月10日に公開された、フランキー堺主演の『男じゃないか 闘志満々』がそうである。

男じゃないか 闘志満々

フランキー堺と森田健作の親子で、フランキー堺の馴染みの小料理屋の娘役である。テレビドラマ『顔で笑って』で、山口百恵が宇津井健の再婚で葛藤する役を演じているが、それとは少しニュアンスの異なるものの、一足早く森昌子も娘役を演じていたわけだ。

この2ヶ月後に、今度は『てんつくてん』(NTV)というホームコメディに森昌子はレギュラー出演している。

こちらは鯛焼き屋の娘だ。登場人物同士のカップルができることについて、「ドラマだからそうなるの」というような、当時だとわりと思い切ったセリフもドラマの中に出てくる。そういうくだけたところもあるドラマだった。

そのときの出演者である渡辺篤史や桜田淳子は、引き続き同局の『カリキュラマシーン』に出演しているが、森昌子は出演していない。

桜田淳子は、今も「ズンコ」といわれるように、バラエティの仕事もこなした。

もしかしたら、森昌子はドタバタがあま好きではなかったのかもしれない。

そうしてみると、『てんつくてん』というのは、彼女にとって貴重な作品といえる。「日テレプラス」で再放送が見たいものだ。

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