『越冬つばめ』は、もちろん森昌子がリリースした42枚目のシングルである。この歌で第25回日本レコード大賞・最優秀歌唱賞を受賞した森昌子は、『悲しみ本線日本海』に続く本格演歌のヒット。かつての「花の中三トリオ」もすっかり演歌歌手らしくなった。
「とんでとんで」で有名な『夢想花』の円広志が、歌番組では彼女の隣でギターを演奏。「ヒュ~ルリ~ ヒュ~ルリ~ララ~」のところはささやかにハモっていたのが印象的だ。
なんで円が……、作曲者の篠原義彦とは円のことである。彼はこの曲のヒットで、少なくとも作曲家としては“一発屋”を脱した。歌の本も頑張ってほしいものである。
『越冬つばめ』(1983.8.21)
越冬つばめ/紅花になりたい
作詞者 A面:石原信一 B面:杉紀彦
作曲・編曲者 A面:篠原義彦(編曲:竜崎孝路) B面:幸耕平(編曲:竜崎孝路)
キャニオン
切ない女心をつばめに託して歌うこの歌で、森昌子は第25回日本レコード大賞・最優秀歌唱賞を受賞。実は彼女は意外と受賞経験が少ない。最大のヒット曲である『せんせい』は、日本レコード大賞、日本歌謡大賞、全日本有線放送大賞、日本有線大賞など新人賞四冠王に輝くのは当然としても、それ以外には『恋ひとつ雪景色』が日本レコード大賞・部門賞に輝いて以来のこと。7年ぶりに3曲目の受賞である。
これは、演歌全般がセールス面で苦戦を強いられるからである。売れても、瞬間的なベストセラーではなくロンクセラーである傾向が強い。その意味で、通算では多くの人に買われ、歌われている作品でも、その年の査定である賞は選考漏れということになるのだ。
その意味で、受賞自体が特筆すべき事であるし、ましてや最優秀歌唱賞というのは、その年の「うまい歌」として最高峰に立ったということだ。森昌子としては歌手冥利に尽きるのではないだろうか。
「花の中三トリオ」でこの大きな賞をとったのは森昌子だけである。これは誇っていいことではないだろうか。
過去に山口百恵が『秋桜』で歌唱賞(77年)、桜だ淳子が『しあわせ芝居』、山口百恵が『プレイバックPart2』で金賞(78年)、山口百恵が『しなやかに歌って』で金賞(79年)、森昌子が『哀しみ本線日本海』で金賞(81年)と、森昌子だけでなく「スタ誕三人娘」のすべてが、あと一歩の所で「最優秀」を獲得できなかった。
“お化け”のピンクレディーは別格としても、スタ誕後輩の岩崎宏美(『すみれ色の涙』で81年)に後れを取ること2年。すでに山口百恵も引退し、桜田淳子もこの時期女優に転向しつつあったが、「三人娘」からやっと「最優秀」が出たのだ。
感激の余り受賞時に嬉し涙を流しながら歌い、その後の『第34回NHK紅白歌合戦』でも泣きながらの歌唱となったのはファンはみな憶えている。
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