『恋は女の命の華よ』は、森昌子44枚目のリリースである。大御所やトレンド作家など名だたる人たちから詞と曲を提供してもらってきた森昌子だが、今回はたかたかしである。そしてこの頃、かつての夫であった森進一と本格的な出会いがある。「花の中三トリオ」だった森昌子が、いよいよ結婚という人生の大きな出来事を経験するのだ。
作詞がたかたかし。もともと放送作家だが、繰り返された再放送によって人気が出たドラマ『パパと呼ばないで』の主題歌を手がけて作詞家として知られるようになった。
浜圭介はもう森昌子の歌ではお馴染み。夫人である奥村チヨの『終着駅』などを手がけている。
『恋は女の命の華よ』(1985.2.21)
恋は女の命の華よ/駅
作詞者 たかたかし
作曲・編曲者 浜圭介(編曲:園広昭)
キャニオン
「いきなり『歌が好きじゃないんだろう』って言われたときはビックリしました」(『カスペ!』)
森昌子はこの頃、先輩歌手・森進一からこう言われたという。
楽屋では一人で読書をし、芸能界に友達はいなかったという森昌子。彼女は子どもの頃から父親に歌わされ、芸能界入りしてからは学校生活もプライベートもなく仕事をしてきたので、しばしば歌手を辞めてしまおうかと悩んでいた。
だが、自分の悩みを他の歌手にうちあけることもなく、込み入った話をすることもなかった。“同志”であるはずのスタ誕三人娘の桜田淳子や山口百恵に対しても同じだった。
それを見透かされたかのような森進一の発言。その後も森進一は、森昌子を気にかけ、いろいろなアドバイスをしたという。
そして森昌子も森進一に心を許し始めた頃、進一はアフリカの難民に対する歌のチャリティを企画していることを告白。森昌子も賛同し、「じゃがいもの会」を発足させた。
花の中三トリオの関係は?
ところで、森昌子と桜田淳子、山口百恵という「花の中三トリオ」の関係は、『明日へ』と『それはじんせい』という2つの自伝によってニュアンスが違うことがしばしば指摘されるが、書かれていること自体はいずれも事実であろう。
たとえば、『明日へ』では、ハワイで番組の収録があったとき、ホテルの部屋が3人一緒だったが、桜田淳子はベッドの上ではしゃぎ、森昌子は1人静かに読書をし、山口百恵は窓の外を見つめて「遊びに行っちゃおうかなぁ」などと呟きまるでバラバラ。3人の口から「部屋、別々のほうがいいよね」という台詞が出たぐらいだという(『明日へ』)。
これは別に「仲が悪い」という意味ではないだろう。
『スター誕生!』という同じ番組からデビューして年齢も同じ。「花の中三トリオ」というユニットでデビューした者同士としてのつながりは間違いなくある。決して悪い関係ではないのだ。
ただ、それは、趣味や世界観が同じだから理解し合うようになった通常の友達関係とは異なる。何より同じ稼業である以上、仲間でありながらライバルというデリケートな関係で気も使う。
そのへんの難しさが『明日へ』では語られているのではないだろうか。
書いてあることが矛盾しているどころか、森昌子という人の、正直で謙虚さのある真面目な人柄がうかがえると思う。
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