『LADY』を歌い『動乱』を好演した桜田淳子

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『LADY』は桜田淳子29枚目のシングルである。今回は77年に『マイピュアレディ』でブレイクした尾崎亜美が詞・曲とも提供している。80年のお正月映画は、今までのような青春アイドル映画ではなく森谷司郎監督の『動乱』(東映)に出演。将校の妻という、いつにない重い役を演じた。「花の中三トリオ」だった森昌子はもちろん、映画やドラマに多数出ている山口百恵も演じたことのない役どころである。いよいよ本格女優へのシフトが進んだ時期といえるだろう。

『LADY』は、セールスから見ると2.6万枚と振るわなかった。ただ、YOUTUBEに書き込まれたコメントの評価は決して悪くない。

「音楽性で言えば、かなりレベルの高い仕上がりになってはいますが、当時はゴダイゴ・サザンオールスターズ・甲斐バンド・ツイストなどのバンドブームが起きており、こちらの方に世間からは注目が集まりました」(『桜田淳子イズム』)という分析の通りであろう。

ヒット曲というのは、曲自体は後に再評価されることはあっても、商業的にはそのときの他曲との兼ね合いがある。

「花の中三トリオ」だった森昌子は、いわゆる大御所作家に歌を提供してもらうことが多く、山口百恵は路線と作家がほぼイコールだった。その点、桜田淳子はもっとも柔軟で、中島みゆきや尾崎亜美などの歌をうたい、時代のトレンドを積極的に表現しようとしていた。

それだけに、セールスが伸び悩んだことが惜しまれる。それにしても、桜田&尾崎コンビでもう2~3曲聴いてみたかった気もする。

『LADY』(1979.11.25)

LADY
LADY/あなたは魔術師(YOU’RE A MAGICIAN)
作詞者 尾崎亜美
作曲・編曲者 A面:尾崎亜美(編曲:鈴木茂)
ビクター音楽産業

開けて80年1月は映画出演。森谷司郎監督で『動乱』(東映)が封切られている。舞台は戦前。五・一五事件、二・二六事件が起きる背景における、寡黙な青年将校とその妻の愛を描いた物語。高倉健主演である。

森谷司郎は東宝出身の監督。1970年代の映画『日本沈没』と『八甲田山』がおなじみである。助監督時代は黒澤明作品にかかわっている。『天国と地獄』(1963年)、『赤ひげ』(1965年)、さらには東宝の人気シリーズとなった『大学の若大将』(1961年)などがある。

桜田淳子はにしきのあきら演じる野上光晴の許嫁で、当初はやや奔放な女性、後半は軍人の妻の苦悩を演じている。スター錦野の寡黙な演技が興味深い。『若い人』という同じ作品で主演した吉永小百合との共演も見所だった。

それにしても、「花の中三トリオ」でキャスケットとハイソックスだった桜田淳子がこんな重い役を演じているのか、と考えると感慨深い。もちろん、アイドル歌手の顔見世出演でもなく、彼女のためにこしらえたストーリーでもなく、彼女は一人の女優としてキャスティングされ熱演したのである。

アイスルジュンバン

アイスルジュンバン

  • 作者: 桜田 淳子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: 単行本

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