『彼岸花』は、森昌子デビュー7周年と銘打ったシングルである。とくれば、作家はまたオーソドックスな“大御所”でいくのかとおもいきやそうではなかった。A面の作曲がヒデとロザンナの出門英、B面は『寺内貫太郎一家』以来、作曲家としてだけでなく俳優・タレントとしてメディアに登場する機会が増えてきた小林亜星とめずらしいメンバーが提供しているのだ。
話題性を狙ったか、それとも、7周年を機に新しい作家たちと新しい路線を進みたいと思ったのか。それよりも、森昌子と懇意にしている人たちが、7周年のご祝儀として提供してくれた、ということかもしれない。
たとえば、出門英とは森昌子が唯一レギュラー出演したホームコメディードラマ『てんつくてん』で共演していた。もっとも、この歌はもちろん、ホームコメディーではなく絶叫型の演歌である。
小林亜星については、むしろその後に付き合いが始まった感じである。『鴎唄』『サビタの花』『駅前物語』など森昌子の歌に曲を提供している。
作詞だけはいつものように阿久悠だった。
編曲は、A面に小六禮次郎が入っている。すでに書いたように森昌子については『少年時代』も手がけており、この年の春クールに日本テレビ系で放送された『青春ド真ん中!』と『ゆうひが丘の総理大臣』で一躍注目された。
いしだかつのりは、テレビ番組の音楽を数多く手がけている。
『彼岸花』(1978.9.5)
彼岸花/拝啓 婿どの
作詞者 阿久悠
作曲・編曲者 A面:出門英(編曲:小六禮次郎) B面:小林亜星(編曲:いしだかつのり)
ミノルフォン
この年の10月からは、『おはなちゃん繁昌記』という森昌子のドラマ初主演作品が始まった。
舞台は江戸時代の下町。要するに時代劇になるが、東北から母を訪ねてやって江戸の都までやって来たおはなちゃんが、周囲の人々の善意と愛情に支えられ、奉公先の難事件、珍事件を次々に解決していくドラマである。
森光子や佐野浅夫らベテランの役者が脇を固めて、コミカルなタッチで茶の間に受け入れられやすいように構成されていたが、2クールの予定が14回で終了してしまった。
桜田淳子は長谷川一夫に目をかけられ歌舞伎座の舞台に上がり、山口百恵は「赤い」シリーズや東宝の映画でモモトモ路線が人気を博していただけに、この“打ち切り”は残念だった。
「打ち切り」の原因を彼女が一人で背負い込むことはないのだが、ファンは、やはり森昌子は歌なのだ、という思いを改めて抱いたのではないだろうか。
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