『若草の季節』は、森昌子7枚目のシングルである。“鯛焼き屋の娘”というのは、当時森昌子は「花の中三トリオ」のひとりである桜田淳子と『てんつくてん』というドラマに鯛焼き屋の娘役で出演中だった。
『若草の季節』のジャケットは、今までのような和風ではなく、切手のような額縁をあしらったバックに、森昌子のジャケットにしてはめずらしく、花飾りの付いたボーラーハットをかぶっている。
歌詞の中身は、次に会うときの結実を期待した恋の歌である。やはり青春歌謡の範疇に入るが、ハリのある森昌子の声で聴くと実に清々しい感じがする。
『若草の季節』(1974.2.10)
若草の季節/娘の暦
森昌子
作詞者:阿久悠
作曲・編曲者:森田公一(編曲:高田弘)
ミノルフォン
桜田淳子や山口百恵に比べると、森昌子は歌以外の実績が物足りない。テレビのレギュラードラマは、80年の山百恵引退までに区切ると、森昌子の出演実績はたったの2本である。その1本をデビュー2年目の73年に経験している。
秋の新番組で、日本テレビが日曜20時に“大河ドラマ”に対抗する重要な枠のドラマに、森昌子と桜田淳子はレギュラー出演することになった。
これまで再三触れてきた『てんつくてん』というタイトルの下町を舞台にしたホームコメディーである。
長い間青春学園ドラマの枠だったが、新しい展開を日本テレビは提案してきた。てんぷくトリオとしての“お笑い”だけでなく、当時ゴールデンタイムにレギュラーを複数持つ売れっ子司会者の三波伸介と、東宝のスターとして銀幕の実績豊富な司葉子を起用したのだ。
そして、桜田淳子は三波伸介営む佃煮屋の娘役。兄が渡辺篤史で姉が和田アキ子というのもすごい。司葉子は後妻で、ドラマは新婚旅行の帰りから始まっている。ドラマのタイトルは、舞台となった佃煮屋の屋号「天佃天」からとったものである。
下町の佃煮屋に義理の新しい家族が加わった。これはもう、ケンカをしたり協力したりといった、いかにも下町らしいつながりをもったドラマの狙いが明らかである。
同じ下町でも、浅草や深川にしなかったのは、前年同局で放送した『パパと呼ばないで』にならったものだろうか。
そして、森昌子は隣家の鯛焼き屋一家の娘役。鯛焼き屋の母親は杉山とく子である。こちらは子沢山ではない。要するに舞台の中心はあくまでも佃煮店で、それ以外の登場人物は脇役の存在である。
そういう意味では、「花の中三トリオ」の2人の共演といっても、桜田淳子のほうがやや役柄が重かったかもしれない。
いずれにしても、森昌子と桜田淳子がドラマの初レギュラーで共演ということで、放送当日(1973年10月7日)の『スター誕生!』には、当日の番組では彼女たちが出演して番宣を行っている。
三人娘なのに、デビューで一歩出遅れた山口百恵はまたしても蚊帳の外か、と観た者は思ったが、山口百恵は宇津井健とこれまた“金9”という当時のTBSでは稼ぎ所の枠で『顔で笑って』に共演。ドラマの主題歌まで歌っていた。
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