『中学三年生』。森昌子が自分自身のリアルな学年を歌った3曲目のリリースである。この歌も阿久悠と遠藤実のコンビである。歌がリリースされたのは73年2月で、森昌子はその2ヶ月後に自身も中学3年生になった。芸能人が堀越学園で学園生活を送ってもそれはそれで思い出はあるかもしれないが、森昌子の場合には一般家庭の子弟が通う区立中学というところが歌に説得力と親しみを感じさせた。
その上、森昌子の歌唱力は相変わらず抜群である。それが何よりである。
歌がうまいから歌手になって歌を聞かせるプロになる。これは考えてみればアタリマエのことである。
80年代以降、歌えない歌手が続々登場した。子どもが納得できないものを見ると、何も信用しなくなり心がすさむ。
その点、森昌子は「歌がうまいから歌手になれたんだな」と子供心に納得できた。
森昌子が、きれいな歌詞の歌いヒットすることは、そういう意味で教育上も好ましいことだった。
森昌子の自著『明日へ』によれば、もともと『スター誕生!』のオーディションは森昌子ではなく叔母が申し込んだという。
森昌子が人見知りが激しかったために、歌でそれを克服してほしいと考えたのだ。
オーデション当日、森昌子に洋服を買うといってつれだし、てオーデションで歌わせたというから人生というのはわからないものである。
『中学三年生』(1973.2.5)
中学三年生/少女が石段のぼる時
森昌子
作詞者:阿久悠
作曲・編曲者:遠藤実
ミノルフォン
『せんせい』が堀威夫の“企画循環説”からうまれた「学園シリーズ」であることはすでに書いたが、阿久悠もその企画には乗り、三部作で行こうと逆提案。その三作目がこの『中学三年生』である。
もっとも阿久悠によれば、三部作といっても阿久悠の考えた「せんせい」は学園コンセプトとしてではなく、人間の縦関係コンセプトを発展させ、姉妹編や親子編といったものを作りたかったらしい。
しかし、番組が放送された日本テレビでは青春学園ドラマが売り物になっていたし、彼女が中学生の本格派歌手という売り方なら、学園コンセプトでスタートすることはよかったのではないだろうか。
それに、次第にリリースを重ねる中で、結果的に彼女は「おかあさん」や「おばさん」など近親者の歌を歌うようになっている。要するに順序の問題で、いずれはどちらも歌うことになるものだったのである。
いずれにしても、けれんみのない純な少女の叙情的な歌は、森昌子が背伸びをせずに歌え、聴く方も安心感があった。
コメント
突然失礼いたします。
祖母ではなく、叔母(お母さまの妹さん)がスター誕生!に応募したのです。
訂正お願いいたします。
余談ですが…
「おかあさん」「おばさん」のほかに、「おばあちゃん」「妹」「おにいちゃん」ってタイトルの曲も歌ってます。(B面やアルバムに入ってます)