『天使も夢みる』といえば、70年代~80年代にかけてアイドルの王道を歩んだ桜田淳子のデビュー曲です。『スター誕生!』で14人目のプロデビューが決まったのは第4回決戦大会。番組史上最高の25社から獲得の意向を示すプラカードが上がり、番組のチャンピオンである最優秀賞(グランドチャンピオン)を受賞。最高のスタートをきりました。
あの阿久悠氏が夢中になった
「神がかり的なことを言うようだが、至極平凡な少年少女の輪の中で一人だけ、浮き上がって見える、あるいは、淡い蛍光色に光るように思える少女がいた。演出を心得ているのか、白いベレー風の帽子をかぶっていて目立ったが、大人の興奮が白い帽子で誘われるものではなく、彼女自身が発散している、彼女自身も気づかぬ何かが立ちのぼっているとしか言いようがなかった。/それが桜田淳子だった」(『夢を食った男たち』)
『スター誕生!』の収録において、初めて桜田淳子を見た阿久悠氏の衝撃がこう記されています。
後に花の中三トリオといわれ、すでにデビューしていた森昌子については、最初はごく普通の中学生という印象だったのが、歌を聴いてから評価が変わったといいます。
ところが桜田淳子の時は、一目でスターの佇まいを感じたというのです。『夢を……』は『スター誕生』の10年間を振り返る書ですが、時系列を無視して彼女のことが真っ先に書かれているほど、阿久悠氏は彼女に夢中になったのです。
『天使も夢みる』(1973.2.25)
天使も夢みる/足長おじさん
作詞者:阿久悠
作曲・編曲者:中村泰士(編曲:高田弘)
ビクター音楽産業
『天使も夢みる』は、「天使」「夢」という言葉をタイトルに入れた、まさに可憐な少女そのままの歌です。
桜田淳子自身も天使をイメージした衣装をまとって歌いました。レコードジャケットには、エンゼルハットといわれた白いキャスケットをかぶっています。キャスケットは、彼女が地方予選会の時からかぶっていた帽子。
番組関係者たちは、この帽子の女の子にスター性を感じ、“これはいける”と囁き合ったといいます。当日ゲストで出演したタレントやそのマネージャーたちも、みんな当時の番組プロデューサー・池田文雄も彼女をこう褒めちぎっています。
「スターになるには二通りあって、この淳子のように初めから輝いているタイプと、これは磨けば輝くというタイプがある。スカウトする側にしてみれば、この淳子のような宝石タイプはすぐにでも飛びつきたくなるタイプ」(『テレビ人生!「そんなわけで」録』)
予選会のときからすでに輝いていた桜田淳子は、まさにそのときのままデビューしたわけです。
森昌子、山口百恵と「花の中三トリオ」「スタ誕三人娘」などと呼ばれましたが、歌の本格派を志向する森昌子、デビュー曲が不発でアイドルらしくない“陰のある売り方”にシフトした山口百恵などと比べ、もっともアイドルらしいアイドルとしてのポジションを得ました。
フォークソング、御三家、同期には麻丘めぐみ、アグネス・チャン、浅田美代子、あべ静江、安西マリアなどライバルが多数ひしめくなかで、中学生の彼女はオリコンで12位、12.1万枚を売り上げ、上々の滑り出しといえました。
以上、『天使も夢みる』といえば『スター誕生!』14人目のプロデビューを果たしアイドルの王道を歩んだ桜田淳子のデビュー曲、でした。
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