『山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン』(講談社)は、7年前に発売された山口百恵主演の大映ドラマのDVDと読み物のセットである。現在も中古市場で全52巻が万単位で入札が行われている人気作品。大映ドラマや当時のトレンドなども知る縁になる。
大映ドラマのブランドに貢献した「赤い」シリーズ
『山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン』(講談社)全52巻が今も人気商品である。
講談社は7年前、1960年代東宝人気映画のクレージーキャッツ出演作品や、森繁久彌社長シリーズなどを収録した『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジン』全50巻の発売を行った。
本編DVDと、当時のエピソードやポスターなどの「読み物」を組み合わせたものだ。
その同時期に、大映テレビが制作したテレビドラマ「赤い」シリーズのうち、山口百恵出演作5作をDVDマガジンとして発売している。
かつての人気映画やTVドラマシリーズのDVDを、読み物付きの書籍コードで販売するのが特徴である。
大映テレビというのは、映画制作・配給会社の大映が倒産する直前(1972年)に、同社(大映テレビ室)が手がけていたテレビドラマの制作を引き継いだ会社である。
大映テレビ制作のドラマは「大映ドラマ」と呼ばれ、漫画チックなストーリーと、物真似されたりおちょくられたりしやすい大仰なワンパターン台詞で構成されることが一貫した特徴だが、それでもつい見てしまう魅力があった。
『夜明けの刑事』『スチュワーデス物語』『スクールウォーズ』……一世を風靡した。
私は、『スクールウォーズ』は観客役で、千駄ヶ谷の国立競技場まで行ったこともある。
山下真司や名古屋章や坂上二郎がいた。
それはさておき、「赤い」シリーズというのは、タイトルに「赤い」がついたドラマシリーズ10作のことをさすが、山口百恵は7作に出演している。
そのうちの1作は『赤い激流』(1977年)。
これがシリーズではもっとも視聴率が高かったが、山口百恵は第1回に特別出演したのみで、ストーリーを動かす配役ではなかった。
したがってこれは今回のリストから外れている。
山口百恵の真骨頂は……
山口百恵は、スパッと引退したので伝説化されている、実は現役時代に頂上を極めたことがない。
デビューのきっかけになった『スター誕生!』では最優秀賞がとれなかった。
デビューしても、森昌子や桜田淳子は新人賞を取ったのに、山口百恵だけはとれなかった。
歌手としては32曲リリースしても、週間のオリコン1位は『冬の色』(1974.12.10) 『横須賀ストーリー』(1976.6.21)『パールカラーにゆれて』(1976.09.21)と3回だけ。
日本レコード大賞や日本歌謡大賞にも手が届かなかった。
主演映画は文芸路線、日活リバイバル路線、そしてやっと自分の路線(横須賀ツッパリ娘路線)を作りかけたと思ったら、今度は原作を公募したりまた文芸作品に戻ったりと、結局ナンバーワンもオンリーワンも達成できなかった。
レコードの生涯セールスも、『スター誕生!』の後輩のピンク・レディーに抜かれてしまった。
「赤い」シリーズも6本も出演していながら、最高視聴率は達成できなかった。
しかし、「赤い」シリーズのブランディングに決定的な貢献を果たしたのは間違いのないところであり、レコードのセールスも、1位ではないけれど3位に食い込んでいる。
要するに、株の世界でいうところの、瞬時に価値を発生して著しい利益を出すキャピタルゲイン型ではなく、長い時間をかけて存在全体から価値を生み出すインカムゲイン型の芸能人だったのである。
その意味で、過去の作品の資産価値で勝負するDVDマガジンに、山口百恵の「赤い」シリーズが登場するのは必然的なことだったのかもしれない。
発表されている主な収録作品
赤い迷路(全26話)
「赤い」シリーズの第1弾である。山口百恵は精神科の大学教授(宇津井健)の娘役。もっとも、実の父娘ではありません。山口百恵の芸能生活の前半は、「青い性」の歌、「赤い」シリーズの複雑な生い立ちや突然の悲劇を経験する少女、そして後に始まる文芸映画、といったパターンでした。
赤い疑惑(全29話)
本作も宇津井健とは本当の父娘ではなく、岸恵子演じる叔母が実の母親である。山口百恵が爆発事故で放射線療法用コバルト60を大量被曝。その時、彼女を助けた医大生が三浦友和で、2人は惹かれ合うが実は異母兄妹だったという話である。
赤い運命(全28話)
伊勢湾台風で妻子と離れ離れになった東京地検検事(宇津井健)が、養護施設の赤ん坊取り違えで引き取った「我が子」が元殺人犯(三国連太郎)の娘と入れ替わったというややこしい話。山口百恵と宇津井健は、今度は実の父娘ながら取り違えられた関係である。絶対に普通の親子関係に設定されないのが大映ドラマである。
赤い衝撃(全29話)
ほのかな愛が芽生えていた女子陸上界期待のスプリンター(山口百恵)と青年刑事(三浦友和)。しかし、刑事の狙撃犯を狙った銃弾で百恵演じるスプリンターが下半身不随に。山口百恵が、三浦友和を初めて異性として意識した番組と言われている。
赤い死線(前後編)
山口百恵引退記念スペシャルドラマでもあり、「赤い」シリーズの最終作にもなっている。
『顔で笑って』も入れてほしかった
私は「誰にも負けない山口百恵フリーク」というわけではないが、このシリーズ画竜点睛を欠いているなと思ったのは、「赤い」シリーズのプロトタイプと思われる『顔で笑って』(1973年)が収録作品に含まれていないことである。
タイトルに「赤い」こそ入ってはいないが、山口百恵の大映ドラマ出演は『顔で笑って』が最初なのである。
山口百恵は、宇津井健とは実の父娘だが父子家庭のため寄宿舎暮らし。
宇津井が恩師(松村達雄)の開業医に請われてそこの院長になり、院長の娘(倍償美津子)と再婚(養子)。バレーボールの恩師でありママハハである倍賞と百恵、そして宇津井の家族像をコミカルに、そしてちょっと切なく描いたドラマでした。ぜひ入れていただきたかった。
いずれにしても、大映ドラマ、「赤い」シリーズ。1980年代のトレンドである。
以上、『山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン』(講談社)は、7年前に発売された山口百恵主演の大映ドラマのDVDと読み物のセット、でした。
1019 山口百恵 赤いシリーズ DVDマガジン 13 DVD付き 応募券切り取り
【中古】ホビー雑誌 DVD付)隔週刊 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン 5 – ネットショップ駿河屋 楽天市場店
コメント