『おふくろさん』と『長崎犯科帳』(1975年4月6日~9月28日)が、ちょうど50年前の今日放送開始されました。ともにともに日本テレビ系で、『おふくろさん』が大河ドラマとぶつかる20時、『長崎犯科帳』が東芝日曜劇場とぶつかる21時から放送されました。
『おふくろさん』は、京塚昌子のお母さんホームドラマに、石立鉄男シリーズを合体させたホームコメディです。
『気まぐれにおひかえあそばせ』(http://ironmanhayato.blog22.fc2.com/blog-entry-82.html)より
1970~80年代は、京塚昌子主演で、寡婦ながら、母親としても仕事でも近所付き合いでも欠くべからざる大切な人として頑張っている「頼りになるお母さん」のストーリーが受けていたのです。
この頃の「お母さん女優」といえば、京塚昌子、森光子、山岡久乃、池内淳子……
「お母さん」として人気だったのに、私生活では全員離婚してお子さんもいないことで共通しています。
そして、山岡久乃以外は、東宝喜劇出身であること。
京塚昌子さんは、そのふくよかな体格が、だいぶイジられていたものです。
さて、ストーリーは、パン屋で働く京塚昌子。その息子が、牧場で働く石立鉄男の母子家庭。
設定では、近所の人々がみな死別を含む独身のため、誰と誰が結婚するのシないのという縁談を中心にストーリーが進む昭和らしいホームドラマです。
たとえば、パン屋の主人が金子信雄。
自分の弟(フランキー堺)を、京塚昌子と結婚させようと動く沢村貞子。
ダークホース的存在の、近所の床屋の主人が大坂志郎。
フランキー堺の娘が吉沢京子で、こちらは石立鉄男と結婚することになります。
京塚昌子のはたらくベーカリーには、毎週100種類以上ものパンを並べることでも話題になりました。
東京には日本最古の牧場があった
【5/4】世田谷コミュニティ財団のせたがやソロさんぽ企画。身近なところで赤堤にある四谷軒牧場の牛魂碑。35年ほど前にあった牧場跡地。四ツ谷から移転したのが由来で、最盛期は乳牛約120頭いたとか。臭いはさておき、近くで絞りたての牛乳が飲めるとかいいよね。世田谷に牧場復活というのも面白そう。 pic.twitter.com/dItrMufGtk
— いちかわとおる (@icchii111) May 4, 2020
主題歌を歌ったブレッド&バターは、石立鉄男の働く牧場の若衆で、複数回出演しています。
四谷軒牧場という、東京・世田谷に実在していた牧場が舞台でした。
実は日本最古の牧場とも言われています。
もともとは、名前通り東京の四谷にあり、それが世田谷赤堤に移転したそうです。
過去には、吉永小百合主演の映画「若い東京の屋根の下」(昭和38年7月14日公開)にも登場したとか。
https://www.setagaya-old.com/sakurajosui-area_akatsutsumi2.html より
世田谷って、私が子供の頃は、たしかに、まだ畑とかありましたからね。
その後、昭和60年に牧場は閉鎖。
夜中もヤッているファミレスになり、隣には牛魂碑がたちました。
平成半ばにファミレスは閉店してマンションになりましたが、牛魂碑はそのまま残っています。
私は30年前、当時その近くに住んでいた妻と、たまたまそのファミレスに入り、牛魂碑を見てドラマを思い出し、感動しました。
ちなみに妻は、『おふくろさん』を知りませんでした……。
この牧場のシーンに登場する若衆が、ドラマの主題歌『ともしび』を歌うブレッド&バターです。
埋め込みませんが、Youtubeにフルコーラス入ってます。
ホームコメディードラマにしては、かなりシックな曲調で、当時戸惑いも正直ありましたが、歌自体は良いと思います。
今聴いても、よいです。
これだけのドラマが、DVD化もされず、CSでも放送されたことがありません。
一部には、ビデオが残っていないんじゃないか、という説もありますが、1975年のドラマで、放送1年後ぐらいには再放送もしていたので、ビデオ自体は残っているのではないかと思います。
石立鉄男マニアの多くがそう願うように、一部でもいいから、放送してくれないかなあ、と私も思っています。
長崎方言と闇仲間の友情
『長崎犯科帳』勧善懲悪の中にも友情が描かれる娯楽時代劇 https://t.co/pzz3OFcwBN 初放送から今日でちょうど50年 #長崎犯科帳 #萬屋錦之介
— 戦後史の激動 (@blogsengoshi) April 6, 2025
萬屋錦之介が、長崎奉行・平松忠四郎(萬屋錦之介)を演じた時代劇です。
町民から収奪を行っているのに、諸事情からお白州で裁けない町年寄(現在の地方議員)や悪徳商人などを、平松忠四郎自らが仲間と「闇で裁く」ストーリーです。
闇仲間は、モグリ医師の田中邦衛、花街客引きの火野正平、花売りの杉本美樹、
萬屋錦之介といえば、中村錦之助時代から、映画、テレビでたくさんの時代劇に出演していますが、私がもっとも印象深いのが、この『長崎犯科帳』です。
今は検索すると、このドラマについて書かれている個人ブログの記事をたくさん見つけることができます。
ストーリーとしては勧善懲悪の「私刑」(←今議論になりそうな言葉ですね)ものですから、当時人気があった『必殺仕事人』シリーズの亜流です。
ただ、それだけではなく、江戸時代の長崎という特殊な舞台で、悪人や被害者も、唐人、オランダ人、キリスト教徒などが絡むため、江戸を舞台とした勧善懲悪ものよりも、複雑で史実性のある展開になっていました。
長崎が舞台のため、平松忠四郎や奉行所の同心たちをのぞく登場人物は、肥筑方言を使っています。
少なくとも悪人たちは、例外なく肥筑方言です。
「ばってん」「~のごたる」「~たい」「しんしゃった」……
方言とともにストーリーが動き、観るものは感情移入していきます。
5話ぐらい続けて見ると、私も脳内の思考で、無意識のうちに肥筑方言を使っているほどです(笑)
これは、『仁義なき戦い』の広島弁と並んで、方言によるコミュニケーションの様式美を知らしめた点で意義深いことではないかと思います。
また、平松は最初、「女と下郎は信用できない」といって自分の正体を明かさなかったのですが、次第に身分を超えた信頼関係が構築されるのも見どころです。
オープニングが実相寺昭雄監督というのも、マニアではおなじみですね。
リンクは貼りませんが、Youtubeで「長崎犯科帳」で検索すると、長崎を舞台にしたドラマであることが象徴的に表現された素晴らしいオープニングがアップされています。
DVDは全7巻です。
『おふくろさん』と『長崎犯科帳』、ご存知ですか。
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