『ゴーゴー若大将』(1967年、宝塚映画/東宝)は、1968年の正月映画であり、若大将シリーズ第11作目(全17作)にあたる。加山雄三演じる田沼雄一にとって最後の大学生の作品である。本来3作目で終わる作品が延長され、加山雄三は30過ぎまで学生役だった。
第3作目の『日本一の若大将』で、若大将は青大将の父親(この時は上原謙)の会社に内定をとっていた。本当はそこで完結するはずだったが、好評なのでシリーズ化されたわけだ。
それにしても、その後、8作も大学生役が続くのだから、加山雄三も万年青年である。
さすがに、その次の『リオの若大将』(1968年)は、実年齢が30歳を超した加山雄三が大学生というわけにもいかず就職するが、その意味では、『ゴー!ゴー!若大将』F最後の大学生作品という記念すべき作品である。
実際にそれらしく、シリーズの定番である、江口のズッコケ、珍食シーン、勘当こそされないけれど家に帰らない期間などがしっかり描かれている。
『ゴー!ゴー!若大将』というタイトルは、当時ゴーゴーが流行していたから。
メインタイトルでは、加山雄三がエレキギターを弾いて、悲鳴のようなシャウトを連発しながら歌っている。
時代を感じさせる作品である。
学生時代の若大将最終作にふさわしい展開
すき焼き屋、田能久の坊っちゃん、若大将こと田沼雄一は、今回も京南大学学生。
所属は陸上競技部である。
つまり、ストーリーのクライマックスである大会は駅伝である。
だが、それは第3作目の『日本一の若大将』で出てきたので、今回はもうひとつ、自動車部のラリーにも参戦する。
今回は、毎度行っている海外ロケがないので、琵琶湖や京都で行われる全日本学生ラリーに出場するということで、国内の関西ロケを加えているわけだ。
若大将は、父親の久太郎(有島一郎)に促されて、町内会の夜まわりに駆りだされたとき、赤まむし(堺左千夫)に襲われそうになったすみちゃん(星由里子)を助けたことがきっかけで、2人の交際が始まる。
青大将(田中邦衛)は今回、自動車部のキャプテン。主力が江口(江原達怡)と、いつもとは少々設定が違っている。
もっとも、青大将(田中邦衛)は女の子をナンバして、調子に乗って運転している時に不注意から事故を起こして足を骨折。
青大将をパートナーに、全日本学生ラリーに出場する予定だった江口は、若大将に青大将の代役で参加して欲しいと頼む。
自動車販売会社を営む青大将の父親(今回は北竜二)が、全日本学生ラリーで優勝したら、自動車を寄贈するというのだ。
いつものように嫌と言えない若大将は承諾することになった。
今回はいつになくヒロインとの関係が熱々で、普通の恋人同士のようにデートを重ねる若大将とすみちゃん。
若大将がラリー合宿でしばらく東京を留守にすることを告げると、すみちゃんは、「雄一さんのいない間、私寂しくなるわ」と素直に告白する。
すみちゃんの今回の職業は、SSの従業員。
つなぎの制服を着て、客から車を預かり、ジャッキで挙げて、下に潜ってアブラまみれになって仕事をしている。
そんなとき、若大将が、店のモーターバイクに乗って学園祭のチケットをもってやってくる。
すみちゃんから招待のOKをとった若大将は、帰り道はヤッホー、ヒャッホーと、喜びながら帰っていく。
そんなにすみちゃんに惚れているのか、若大将!
さて、練習合宿で京都に着いた若大将は、青大将の父親(北竜二)に祇園に連れて行ってもらう。
そこで会ったのは、祇園の芸者京奴(浜木綿子)。
もともと、青大将の父親に贔屓にされていたのだが、京奴では何かと若大将の世話を焼く。
全日本学生ラリーには、すみちゃんもかけつけるので、京奴(浜木綿子)の姿を見て、いつものようにすみちゃんはライバル視する。
全日本学生ラリーは、例によって、江口(江原達怡)の大ボケも健在。
ラリーのコース地図に書かれている「小さな橋」を、「おさなばし」と読んで、道を間違えてしまう。
挙句に、途中で自分たちをからかった挙句に事故を起こしたダンプの運転手を、病院に連絡するなどしていたため若大将チームは優勝を逃してしまう。
が、人助けが高く評価され、自動車販売会社社長である青大将の父親は、自動車部に自動車を寄贈するので、まあ終わり良ければ全て良しということか。
それにしても、日産自動車が全面的に協力している作品に、車の事故がストーリー上2度出てきたのは捨て置けない。
当時はそれだけ車の事故が多かったのだろうが、それと同時に、自動車会社がスポンサーでも、自動車事故を描く気骨が、制作側にあったということだろう。
若大将はすみちゃんを田能久に招待。
ところが、その日、たまたま京奴(浜木綿子)が訪ねてきたため、若大将の家族(有島一郎、飯田蝶子、中真千子)は、てっきり若大将の交際相手なのだと思い込む。
“商業学校しか出ていない”久太郎(有島一郎)などは、すみちゃんを邪険に追い返してしまうのだ。
ショックのすみちゃんは、SSの勤めもやめてしまい、身を引こうとする。
若大将は、いつものように、そういう時に言い訳をしない。
江口が、もう1度すみちゃんと会ってみろと勧めるが、それを拒み、憤懣を合宿の枕にぶつける。
おもいっきり床に叩きつけた枕は破裂して小豆が出てしまう。
ここからは、第1作目の『大学の若大将』におけるトイレの浄化槽マンホールの蓋鉄板焼き、第2作目の『銀座の若大将』におけるドッグフード鍋に続く、おなじみの珍食シーンである。
若大将は、それをおしるこにしてしまった。
「なんだか油くせーな」と部員はいうが、意に介さずおしるこを食べる若大将。
若大将は、老舗のすき焼き屋の坊っちゃんだが、悪気のない大食漢なので、“悪食”を厭わない。
さすが、授業中にドカベンの早弁をするだけのことはある。
一方、すみちゃんは、それでも若大将が諦めきれず、京奴に若大将との結婚を祝福に行く。
わざわざ行くということは、まだ可能性をさぐっていたんだね、すみちゃん。
京奴からは、若大将が好きなのはあなたなのだといわれて、駅伝で走っている若大将のところに向かう。
あてはいつもどおりのラストだ。
走っている最中の若大将に、すみちゃんは駆け寄って「すきよ、好き好き」と声をかけ、嬉しくなった若大将が逆転優勝する。
いつも、はげしい誤解と、青大将をキープ君につかっているすみちゃんには、いささかわだかまりがあったが、『ゴー!ゴー!若大将』では、なんとも微笑ましいカップルだった。
学生時代の最後となる作品として、『ゴー!ゴー!若大将』は全体としていつになく明るく楽しく微笑ましい展開だった。
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