『クレージー黄金作戦』ラスベガスのシーンで興奮最高潮!

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『クレージー黄金作戦』ラスベガスのシーンで興奮最高潮!
『クレージー黄金作戦』。東宝35周年記念映画として制作され、のべ293万人を全国で動員したという。『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.5』(講談社)に収録されている。東宝クレージー映画がそろそろマンネリかと言われた頃、まだひっくり返す余力のあるうちに大作で巻き返しをということで、東宝、というよりナベプロが制作費を出して勝負した2時間37分の一本立てである(短編映画を併映)。

今回は植木等、ハナ肇、谷啓の3人を中心にストーリーが進んでいく。日本からハワイ、そしてロサンゼルスに舞台が動く。

あらすじ(ネタバレ御免)

今回の植木等の役名は町田心乱という。父親の寺を継いだ住職ということになっているが、本人は博打に熱中し、檀家から金を借りまくり。もちろん返済などしていない。

調子のいいことを言っては金を引っ張っていたのだが、そんな心乱の苦手は海野月子(浜美枝)。どんなにツキがあるときでも、彼女が現れると心乱は必ず博打に負けるのだ。

そんな心乱に対して檀家総代の北川(有島一郎)は一計を案じる。

自分が常務をつとめる金友商事で働かせ、給料から債務を差し引くのだ。

しかし、北川の前ではかしこまっている心乱も、不承不承の就職など熱心なはずがない。

陰では「遅れず、休まず、仕事せず」などと官僚のようなことを言い、すきを見ては会社を抜けだしてパチンコ屋通い。

「やんめら~れなーい、やんめら~れなーい、こんなに入っちゃやんめら~れなーい」と、例の調子でデタラメな鼻歌を歌いながらパチンコ台の前で玉を弾く心乱。

きっと、当時の映画館はここで笑いが起こったのだろう。

そこで心乱は、玉の出るパチンコ台を譲った外人から、お礼にコイン(チップ)をもらう。

ハナ肇は国会議員、板垣重金。

支持者(柳谷寛)らから糞尿処理の陳情を受け、衛生施設を作ってくれと衛生大臣(十朱久雄)や派閥領主の沢島代議士(石山健二郎)に頼み込むが、その気がない沢島らは板垣を煙たがっている。

谷啓は仁進病院の医師、梨本金男。

金儲け主義の院長・王仁口(藤木悠)とはウマがあわないが、そこではたらく看護師、花園百合子(園まり)に密かに恋している。

と、この三者はもともと何の接点もない。

が、彼らがそれぞれのいきさつからロサンゼルスに飛ぶことになり、飛行機の中で一緒になるまでの脚本はリズムが良く出色である。

さて、心乱は、渡米していた大浜部長(藤岡琢也)から、外人がくれたコインがラスベガスのチップであることを聞く。

さっそく知り合いの業者(沢村いき雄)に3000枚コピー品を作らせ、ラスベガス行きをうかかう。

金友商事では、ロサンゼルス駐在員を人選に入っていたが、候補は山口(桐野洋雄)と松田(丸山謙一郎)。心乱は一計を案じて、山口をかついで北川の心証を悪くする。

加えて、北川は「ち」と「つ」を違えていう癖があったために、人事課長(向井淳一郎)にアメリカ行きの辞令を出す社員を「まつだ」ではなく「まちだ」と言い、心乱に辞令が出てしまう。

重金は、沢島から衛生処理施設についてOKの返事をもらった上で外遊を薦められる。重金は大臣になれるかもしれないという沢島の口車にのり、家宝の茶釜を母親(飯田蝶子)の反対を押し切って処分。渡米の金を作る。

梨本は、交通事故にあったアメリカ人を治療したが、その甲斐もなく死亡。

しかし、いまわのきわに、百万ドルの遺産を梨本に与えると言い残す。

その時、梨本は王仁口が百合子を口説いているところを目撃。誤解だったのだが、失意の梨本は「今に見ていろ」と病院を去り、遺産を受けとリに渡米を決意する。

搭乗のシーン。スチュワーデス(現C.A)が、心乱が登場するときはニコニコしているのに、重金のときは笑いが消えて登場を急かしているのがなんとなく笑えた。

余談だがこのスチュワーデス、よく見ると笑顔がきれいなのだ。

スチュワーデス

3人はいったんハワイによってワイキキビーチで楽しむ。

そこで、若大将(加山雄三)と偶然出会い、旅行記を書くために来たという月子とも再会する。

加山雄三

そして一行はロサンゼルスへ。

金に敏い月子は、100万ドルの遺産を受け取るという梨本に同行するが、現金がないことでがっかりして帰ってしまう。

しかし、外国人は宝の地図を残しており、それを狙っている一団のギャング(石橋エータロー、安田伸)が見逃さなかった。

重金は、随伴する中林書記官(桜井センリ)が見せてくれた日本の新聞から、沢島が汚職の責任をすべて重金に押し付けていたことを知る。

その上、1ドルと100ドルを間違えてチップをばらまいていたために、帰りの飛行機代も事欠き、おまけにもののはずみで女子用トイレに入って騒ぎになったために勾留されてしまう。

梨本は現金の遺産を手に入れられず、百合子を思い出し世を儚むが、そこで止める警官と一悶着となりやはり勾留。

心乱は、空港でロス支店長(人見明)に「人違いだから次の便で日本に戻るように」と言われたものの、辞表を出してそれに従わず。

飲酒して陽気に酒瓶を振り回していたが、誤って警官にあたってしまったためにこちらも勾留。

3人はまたしても留置場で再会する。

そして、心乱は「向こうに3000ドルがあるから一緒に行って分けよう」と言い、3人でラスベガスに向かう。

心乱はバス代をあてにして誘ったのだが、2人とも金を持っていなかったのでバスは途中までしか乗れず、あとは徒歩で向かうことになった。

途中で、3000ドルのチップを見せたり、インディアン(犬塚弘)に遭遇したり、百合子の幻影を見たり

園まり

といろいろあったが、やっとラスベガスに到着。

ここが最大の山場になるのだが、最初に3人、そして途中からクレージーキャッツの7人がラスベガスの大通りで歌い踊る。

クレージーキャッツの7人がラスベガスの大通りで歌い踊る

私は、『出発進行』というクレージーの晩年のヌルいコント番組を見ているので、もっとテンポのゆっくりしたものを想像していたのだが、リズムが良くてびっくり。さすがミュージシャンのグループだな、と感動してしまった。

で、この後は3人がホテル・リビエラのショーを見るという設定で、ザ・ピーナッツ、ジャキー吉川とブルー・コメッツ、ジャニーズの歌と、ハナ肇とクレージーキャッツのコントが入る。

ハナ肇とクレージーキャッツのコント

ミュージカル映画、バラエティー映画と言われた東宝クレージー映画の面目躍如である。

ただ、他の方もブログで書かれているが、尺が長すぎたかもしれない。

肝心のストーリーはこれから佳境に入るのだが、ラスベガスのシーンで気持ちのほうがクライマックスになってしまい、あとは気持ち的にも付け足しのような気になってしまった。

簡単に書くと、梨本が宝の地図から100万ドルを命がけでとってきたものの、それを狙うアルー一味と争いになり、ドサクサまぎれにその金がルーレットの掛け金に。

しかも大当たり日本円130億円になってしまった。

そして、アルーは御用。

終わりよければすべてよしと思ったが、分前にありつけなかった月子が、アメリカから慈善連合協会に「全額寄付」すると電報を入れる。

そうとは知らず、帰国した3人は局長(藤田まこと)の差し出した寄付書面にサインしてしまった、というオチである。

東宝専属のバイプレーヤーも総出演

レビューの中には、アメリカに行くまでの経過が長すぎるという意見もある。

だが、この国内編では、藤木悠、沢村いき雄、石田茂樹、向井淳一郎、桐野洋雄、草川直也、鈴木和夫、丸山謙一郎、塩沢とき、北川町子、豊浦美子、中真千子、浦山珠実など、東宝専属メンバーが惜しげもなくちょい役で続々登場するので、私個人はストーリー度返しで、それだけでサイコー感に浸っている。

もちろん彼らは他の作品でも出演はしているのだが、今回ほどまとまった人数は出ていない。

尺が長ければ必然的に出演者も多くなるのだ。

植木等が八面六臂で活躍する「日本一シリーズ」もいいのだが、私はクレージー+東宝俳優陣(加えて今回はナベプロタレント)が総出演して、ガヤガヤと明るく楽しいこうした作品が好きである。

クレージーキャッツを懐かしみながら、なおかつ東宝映画も懐かしめるからだ。

作品としての評価は様々あるが、シリーズ中随一といえるかどうかについては、ストーリーが作りこまれていないことを理由に否定的な人もいる。

それはわからないでもない。

たとえば、敵の一味だったはずの石橋エータローと安田伸が、いつの間にか3人の側にまわっているのは説明不足だ。

彼らを国内編から登場させてストーリーを作っておくべきだったと思う。

だが、そうしたマイナス点を引いても、やっぱり、ラスベガスのシーンのインパクトは大きい。

それと、繰り返しとなるが、本作は馴染みの出演者が多く、それだけでも明るく華やいだ気持ちになれるのだ。

とくに個人的には、石田茂樹が出演するときの作品にそれがいえるように思う。

坪島孝監督の丁寧な作り方も感情移入しやすくしているのだろう。

いずれにしても、東宝クレージー映画の楽しさは十分に伝わった。少なくとも私は満足である。

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