『禁じられた遊び』で山口百恵の初期の路線が確立した

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『禁じられた遊び』。フランス映画の話ではない。山口百恵の芸能人生前半のキャッチフレーズとなった「青い性」路線第2弾である。2曲目の『青い果実』で、森昌子とも桜田淳子とも明らかに違う、今風に言えばオンリー・ワンの路線を見いだした。それをさらに確実なものとしたのが『禁じられた遊び』である。

歌詞は、まさにデリケートな年齢に差し掛かった少女のきわどい心情が歌われている。中学生アイドルとしては異例のことであった。

『禁じられた遊び』(1973.11.21)

禁じられた遊び
禁じられた遊び/パパは恋人
山口百恵/宇津井健(B面)
作詞者:千家和也
作曲・編曲者 A面:都倉俊一(馬飼野康二) B面:都倉俊一(高田弘)
CBS・ソニー

B面には、A面とうってかわってファミリー色を出した歌『パパは恋人』が入っている。これは、当時ドラマ初レギュラーとなった『顔で笑って』の主題歌である。主演で父親役の宇津井健とのデュエットになっている。

『顔で…』は、宇津井健&サントリーでお馴染みの『ザ・ガードマン』が放送されていた枠である。ここは後に大映ドラマ「赤い」シリーズが放送されている。

しかし、このドラマがそのプロトタイプといえるかどうかはわからない。なぜなら、全く路線が違うからである。

山口百恵は、宇津井健とは父娘だが父子家庭のため寄宿舎暮らし。宇津井健が恩師(松村達雄)の開業医に請われてそこの院長になり、院長の娘(倍償美津子)と再婚(養子)する。

倍償美津子は山口百恵が中学で所属するバレー部のコーチという設定だ。学校はお嬢さん学校の四つ葉学園。倍賞美津子ら一族もそこの出身ということになっている。

東京・大森にあるという設定だが、大森にそのような学校は実在しない。実際にロケで使ったのは、田園調布にある調布学園ではないかと思われる。

山口百恵は倍償美津子について、コーチとしては大好きだが、父親の再婚相手であるため複雑な気持ちになる。

父に甘えたい娘でありながら、父のお世話を倍償美津子に譲る切ないシーンもたびたびた出てきた。

本人は顔を売るため、ドラマとしては花を添える感じで、添え物的出演が常だったアイドルのレギュラー出演としては、ちょっと難しい設定である。

この後も彼女の出演する作品は不幸との葛藤がついてまわった。

「冒険でしたが、舞台出演中の楽屋に百恵ちゃんを訪ね、一目見て“買いだ”と躊躇なく決めました」と述懐したのは山本典助プロデューサー(『テレビドラマ全史』)。彼女の複雑な生い立ちが、薄幸のヒロインにハマると睨んだのかもしれない。

そういう意味では、「赤い」シリーズのプロトタイプといえなくもない。

同時期、「中三トリオ」にはみなドラマの仕事が入っていた。森昌子と桜田淳子は『てんつくてん』(日本テレビ)という三波伸介主演の下町ホームコメディ。

森昌子は鯛焼き屋、桜田淳子は佃煮店のそれぞれ明るい娘役である。2人とのキャラクターの違いが初レギュラーのドラマに象徴的にあらわれていたのだ。

テレビドラマ全史 1953~1994 TVガイド

テレビドラマ全史 1953~1994 TVガイド

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京ニュース通信社
  • 発売日: 1994
  • メディア: 大型本

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