『加山雄三のブラック・ジャック』(1981年1月8日~4月9日、松竹/テレビ朝日)全13話中、『B・J(ブラックジャック)入院す』(第7話)には橋本功、結城しのぶなどが出演している。結城しのぶが尊敬するブラック・ジャックによって外科医として立ち直る話だ。
『加山雄三のブラック・ジャック』ときなんだ
『加山雄三のブラックジャック』については、すでにご紹介したことがある。
そのときに書いたが、原作は手塚治虫が最後の勝負として、劇画ブームに対抗するためにあえてヒューマニズムを封印している。
ドラマでは、若大将のブラック・ジャック版のごとく、むしろそのヒューマンな面を強調している。
見ていて、なんともじわーっと心があたたまる。
ヒューマニズムを加えた翻案によって、原作マンガでは描ききれなかった、ブラックジャックというキャラクターの奥行きをもたせることができる。
アウトサイダーなだけのブラックジャックではなく、若大将的ヒューマニズムにあふれた画廊経営者・坂東次郎の隠れたもう一つの顔という描き方に対する評価は、好き嫌いの問題はともかくとして、それはそれで筋が通っていると思う。
だから、賛否で言えば「否」が多そうな本作も、カルトなファンは熱心で、DVD化されたり、CSで放送されたりしたのだ。
ということで、今記事は、結城しのぶの誕生日が25日なので、彼女が出演した『B・J(ブラックジャック)入院す』(第7話)を振り返ってみよう。
ブラック・ジャックを尊敬する女性
『B・J(ブラックジャック)入院す』(第7話)で、結城しのぶが演じるのは、ブラック・ジャックを医師として尊敬し、内心では異性としても惹かれていると思われる女医の役である。
ブラックジャック(加山雄三)は、めずらしく表でも坂東次郎ではなくブラック・ジャックである。
彼の“作品”である人造人間のピノコのバレンタインデーの買い物に付き合ったので。
ところが、その際、突然やってきた車にハネられてしまう。
それは事故ではなかった。
暗殺された某国大統領の首のすげかえ手術を行ったブラックジャックは、口封じで暗殺団に命を狙われていたのだ。
恩人を殺害することで口封じとは何たることか。
などと憤慨しているときではない。
ブラック・ジャックは一刻も早く手当をしなければならない。
運び込まれた病院の院長は健二郎(橋本功)。
ブラック・ジャックは、瀕死の重傷なのに、こう治療してくれと手順を述べ健二郎を激怒させる。
健二郎の妹の女医・恭子(結城しのぶ)は、患者がブラック・ジャックであることに気づく。
昔、ブラック・ジャックの鮮やかな手術を見たというのだ。
ブラック・ジャックというのは、アングラな存在ではなかったのか。
しかも、どこかの開業クリニックで手術するわけないから、大学病院ということになるが、「白い巨塔」で無免許医の執刀など許すだろうか。
そもそも、瀕死の重傷で、医師と議論するのか。
……などというツッコミを行ってはならない。
もとより健二郎は、外科医としては名が知られているものの、ブラックジャックの腕も知っているので、コンプレックスから、患者であるのにブラックジャックの“闇医者稼業”をののしった。
ちなみにピノコは、倉持警部(藤岡琢也)の聴取を受けるが、ブラック・ジャックが坂東次郎であることまではバレない。
それはともかくとして、医師としての自尊心がある健二郎(橋本功)は、結局ブラックジャックを必死に救った。
だが、暗殺団はまだ諦めなかった。
入院しているブラックジャックを狙っていた。、
が、間違って標的にされた健二郎(橋本功)が撃たれてしまった。
ブラックジャックは、健二郎の妹の女医・恭子(結城しのぶ)に、術式を指示した。
彼女は、自然気胸の患者の処置を誤って死なせてしまった過去から、メスを握れなくなっていた。
だが、ブラックジャックが彼女の手術を見守り成功させた。
すべてが済んでから、倉持警部が聞き込みに来たが、ブラック・ジャックはもう去っていた。
結城しのぶの最後の笑顔がきれいだった。
70年代ドラマの心地よさ
結城しのぶ(1953年11月25日~)は、1970~80年代に活躍された女優で、結婚と出産のブランク後、2000年頃からまた仕事を再開している。
プライドの高い悪女や、幸せにはなれない薄幸な女性を演じていた印象があるが、上記の通り、本作もその一つだ。
女医役では、田村正和が医師と幼稚園園長を兼務する『子供が見てるでしょ!』(1985年10月11日~12月20日、TBS)で、恋人でかつ同僚の女医を演じているが、こちらも、吉田日出子や田中美佐子らのライバルがいて、結局結ばれないことを示唆している。
話を戻すと、『加山雄三のブラック・ジャック』は、原作至上主義者からの評判はよくなかったが、カルト的な人気があり、DVD化されたり、CSで放送されたりしている。
私も、放送当時はどちらかというとそうだったが、今見ると、アウトサイダーなだけのブラックジャックではなく、原作が削ぎ落とした人間的な温かさが描かれ、昭和のドラマらしい独自の味わいがある。
もちろん、突っ込みどころはあるが、それもまた昭和ドラマのご愛嬌である。
以上、『加山雄三のブラックジャック』の『B・J(ブラックジャック)入院す』(第7話)には橋本功や結城しのぶなどが出演している、でした。
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