『俺はおまわり君』(1981年2月4日~9月16日、ユニオン映画/NTV)は田園都市線沿線の交番勤務の警官の日常を描いた話

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『俺はおまわり君』(1981年2月4日~9月16日、ユニオン映画/NTV)は田園都市線沿線の交番勤務の警官の日常を描いた話

『俺はおまわり君』(1981年2月4日~9月16日、ユニオン映画/NTV)は、田園都市線沿線の交番勤務の警官の日常を描いた話。青春の挫折を演じてきた中村雅俊は本作を境に路線変更。『俺たちの勲章』以来のタイトルに「俺」とつくドラマも終了した。

登場人物と設定

『俺はおまわり君』の主演は中村雅俊。

田園都市線が動く光景を映し出すロケーションである、神奈川県川崎市宮前区鷺沼にある新妻署が舞台。

管内の四丁目派出所に、班長として着任した巡査長、岡一二三(おか・ひふみ)を演じている。

派出所勤務のメンバーは全員がヒラ巡査。

渡辺篤史、山谷初男、森川正太、小柳トム、河合宏ら。

警察官コントで『お笑いスター誕生』に登場した小柳トムが、まさに小柳巡査として出演しているのだ。

率直に言って、仕事もできないし、そもそも使命感も希薄な連中で、いつもしくじりをやらかして、班長の中村雅俊が新妻署課長の小池朝雄に叱られ、エリート刑事の大林丈史に馬鹿にされるというパターンだ。

ちなみに、大林丈史はリアルで東京外国語大学の出身だが、中村雅俊はそこを落ちて、一浪して私学の慶應義塾大学に入った。

大林丈史刑事が、中村雅俊班長を見下しているシーンには、そんなことも重ねてみてしまう。

派出所勤務ではないのに、遊びに来る警官として、原田伸郎と清水国明のあのねのねコンビ。

婦警の早坂あきよと増田香織らも、中村雅俊の足を引っ張っている。

近所には、ガセネタを持ち込んで迷惑を掛ける自動車修理会社経営のハナ肇、娘の藤谷美和子、使用人の長谷川諭らもいる。

新妻署のエリート刑事(大林丈史)の捜査の邪魔をすることも度々ある。

中村雅俊は、三十路の巡査長であるにもかかわらず、自分でアパートやマンションを借りずに、元巡査の伴淳三郎の家に下宿する。

伴淳三郎には、巡査部長の和田アキ子と、出戻りのあべ静江という2人の娘がいる。

ちなみに、巡査部長と巡査長は、巡査部長のほうが階級は上である。

中村雅俊は、公私に渡って、この一家にネチネチ批評される。

どうしてそんなところに下宿するのかは謎である。

古き良き昭和の青春ドラマの定番の設定として、下宿という舞台を残したのだろう。

しかし、時代はすでに1980年代に入っており、大学生でも下宿という文化がすでに廃れつつあったので、30歳の部下がいる警官が下宿暮らし、という設定はさすがに時代に合わなくなっていたのではないだろうか。

そんな中村雅俊が、息抜きに使っているスナックのママが児島美ゆきである。


中村雅俊が、それまで3度演じてきた青春学園ドラマは、中村雅俊先生自身が型破り教師として、失敗したり悩んだりする。

一方、本作は管理職警官として、部下の失敗を謝ったり、正論のお説教をしたりする。

そうじゃなくて、『踊る大捜査線』の青島刑事のような、中村雅俊自身の警らにおける愚直ゆえの挫折や失敗を見たかったのに。

有り体に述べると、岡一二三は、カースケ(俺たちの旅)やソーリ(ゆうひが丘の総理大臣)に比べて大人で真面目なので、つまらない。

人物に魅力を感じないのだ。

カースケやソーリは、親の縁が薄かった。

とくにソーリは、小さいときに母親に捨てられ養護施設で育ち、しかも妹だけが別の養父母に引き取られて一人ぼっちになってしまう設定だった。

岡一二三も母子家庭だが、母親(谷口香)はラス前で亡くなってしまい、岡一二三のキャラクターに陰翳をつける役割を果たしていない。

青春スターを卒業して優等生中年に路線は変更された

中村雅俊は、『われら青春!』(1974年4月7日~9月29日、東宝/NTV)で主演に抜擢され、『俺たちの旅』(1975年10月5日~1976年10月10日、ユニオン映画/NTV)『ゆうひが丘の総理大臣』(1978年10月11日~1979年10月10日、ユニオン映画/NTV)など一連のドラマでキャラクターを確立。

青春ドラマスターとして確固たるポピュラリティを獲得した。

その当時の中村雅俊は、東北(宮城県牡鹿郡女川町)の訛りが時々顔を出し、特別演技派というわけでもないのに、涙を流すシーンになると、こっちもつられてしまうような、不思議な力を持った俳優だった。

岡田晋吉プロデューサーと鎌田敏夫脚本という、青春ドラマのゴールデンコンビによって、同じようなキャラクターの作品を何作も作ってもらったことで、キャラクターが作りこまれていくとともに、中村雅俊もそれを自分のものにしていったように思われる。

そこには、いつも社会や人生に対して正直であるがゆえに、挫折したり、ふしだらであったり、おせっかいであったりする、必ずしも格好良くない人物が描かれていた。

それが観る者の心を打ったのでだ。

そんな一連の青春シリーズが一段落して、3年ぶりに登場したのが、今回の『俺はおまわり君』だった。

述べたとおり、『俺はおまわり君』は、青春ドラマの尾てい骨を残しながら、ホームドラマに近い作り方をしている。

が、いずれにしても、なにか中途半端で、かつ時代遅れのそしりも免れない。

全体を通して、青春学園ドラマにおける、中村雅俊の愚直な生き様を見たものからすると、ちょっと期待はずれかもしれない。

人気ドラマ『太陽にほえろ! 』に近いスポンサー料をとっていた割には、それほどお金をかけた番組にも感じなかった。


何しろがっかりしたのは、あれだけ愚直で若々しい役を演じていた中村雅俊は、この作品以後、『夜逃げや本舗』のようなデキる人であったり、傾いた会社や旅館をサルベージする優等生の役を演じたりと、すっかりキャラクターがかわってしまった。

本作の『俺はおまわり君』が、その過渡期というか、変化の始まりだったのかもしれない。

そして、中村雅俊自身が出演してきた『俺』とついた青春ドラマ、

『俺たちの勲章』(1975年4月2日~1975年9月24日、東宝/日本テレビ)、
『俺たちの旅』(1975年10月5日~1976年10月10日、ユニオン映画/日本テレビ)、
『俺たちの祭』(1977年11月20日~1978年4月30日、ユニオン映画/日本テレビ)、

などがあるが、『俺はおまわり君』を以て終了している。

その意味では、そういう意味では、中村雅俊のファンからすると、エポックとなる作品だったのだろうと思われる。

以上、『俺はおまわり君』(1981年2月4日~9月16日、ユニオン映画/NTV)は田園都市線沿線の交番勤務の警官の日常を描いた話、でした。

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