東宝クレージー映画、『東宝昭和の爆笑喜劇』で楽しもう

東宝クレージー映画が今再評価されている。1960年代に隆盛を誇った東宝の植木等主演、もしくはクレージーキャッツの冠映画30本のうち26本が、今年4月から月2回発売されている『東宝昭和の爆笑喜劇』(講談社)に収録されているからである。

これまでにも各作品は、DVDボックスで発売されたり、地上波、CSなどで放送されたりはしていた

ただ、『東宝昭和の爆笑喜劇』には関連資料、関係者インタビューなども掲載されているので、各作品についての予備知識を得た上で改めて鑑賞することができるのだ。

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1960年代といえば日本は経済成長の真っただ中。社会がどんどん便利になっていった時期だ。当時の東宝映画は、そうした時代背景で、駅前シリーズや社長シリーズなどの「仕事をする人の喜劇」がたくさん作られた黄金時代である。

そのひとつの看板が「東宝クレージー映画」といわれた30本だったのだ。

東宝クレージー映画とは何だ

「東宝クレージー映画」の第一弾は『ニッポン無責任時代』。現在発売中の『東宝昭和の爆笑喜劇』(講談社)の第1巻が収録した作品である。

「東宝クレージー映画」の流れを簡単に追ってみると、『ニッポン無責任時代』が1962年。同じ年に『ニッポン無責任野郎』が上映され、それらはシリーズの端緒となる「無責任シリーズ」と呼ばれる。

ハッタリもかますがとにかく底抜けに明るい破天荒な人間像である。

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そこから、だんだん作品の系統が複線化する。

ひとつは、化粧品のセールスで成功する『日本一の色男』(1963年)、先祖の教えにのっとりホラを吹きながらも行動をそれに合わせて成功していく『日本一のホラ吹き男』(1964年)、ゴマをすることでのし上がっていく『日本一のゴマすり男』(1965年)といった「日本一」シリーズである。

基本的に「無責任男」のキャラクターが180度変わるわけではないのだが、「無責任」色を全面に出すのではなく、植木等の努力が成果を生む展開である。

これは、ビジネスで成果を上げる「社長シリーズ」にならった、高度経済成長時代の東宝お得意のストーリーといえるかもしれない。

日本一シリーズは全10本ある。

もうひとつは、クレージーキャッツ全員がひとつの成果を上げていくという「クレージー○○作戦」シリーズだ。

やはり、植木等を中心にストーリーは構成されているが、作品の傾向は独自のものである。

たとえば、『クレージー作戦くたばれ!無責任』(1963年)などは、「無責任」そのものを否定し、いつも明るく楽天的な植木等が世の中の仕組みにいったんは挫折しかけるという、「無責任男」とは明らかに異なるキャラクターのストーリーである。

基本的にクレージー○○作戦シリーズは、日本一シリーズ同様、努力して成果を勝ち取るというコンセプトである。クレージーキャッツ全員による歌と踊りが劇中にある。

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クレージー○○作戦は14本作られた。

植木等主演の映画とクレージー○○作戦の違いとして気づくのは、植木等の役名である。

前者は、「○○等」と、下の名前に「等」が残る。だが、「クレージー○○作戦」は、毎回全く異なる名前である。「無責任」「日本一」シリーズに縛られないキャラクター設定をする、ということなのだろう。

そして、舞台設定を時代劇にした「時代劇シリーズ」もある。

『ホラ吹き太閤記』(1964年10月)、『花のお江戸の無責任』(1964年12月)、『クレージーの無責任清水港』(1966年)など全4本がある。

娯楽映画といえば、当時は時代劇が定番。現在では映画はもとより、テレビ地上波でも時代劇のレギュラー番組は姿を消してしまった。時のうつろいは残念なことが多々あるものだ。

さらに、クレージー映画からの派生作品、つまり「スピンオフ」も2本ある。いずれも谷啓主演の『空想天国』(1968年8月)、『奇々怪々俺は誰だ?!』(1969年9月)などがある。

古澤憲吾監督と坪島孝監督

東宝クレージー映画のメガホンをとったのは、古澤憲吾、久松静児、杉江敏男、坪島孝、山本嘉次郎、須川栄三、スピンオフの松森健などがいる。

作品の数と確固とした傾向を作った点で、代表的なのは古澤憲吾と坪島孝だろう。

『東宝昭和の爆笑喜劇』の中で小松政夫や浜美枝らが、撮影現場における2人の違いについて語っているが、破天荒な娯楽映画としてのコンセプトを具現したのは古澤憲吾作品であろう。

見終わってから「明るく前向きに生きよう」と、なんか無性に元気が出てくる(ただし合理的な根拠はない)作品ばかりだ。

一方、坪島孝作品は、破天荒な中にもディテールにリアリティを追求していたように思われる。

前述した『クレージー作戦くたばれ!無責任』は、植木等演じる田中太郎が、いったんは絶望のどん底に落ちながら、浜美枝演じる前川恵子に励まされて勇気を取り戻すという、青春映画のノリである。

30本もあると、出演者やストーリーだけでなく、監督や脚本などからも傾向を論考できるのが楽しい。

ということで、『東宝昭和の爆笑喜劇』が発売されてから8ヶ月たってしまったが、このブログ、これからこのシリーズのレビュー記事も書いていきたいと思う。

東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン 2013年 4/23号 [分冊百科]

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/04/09
  • メディア: 雑誌

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