『社長えんま帖』(1969年、東宝)は33作上映された森繁久彌社長シリーズ30作目。新メンバー加入と唐津くんちの迫力ロケが見所

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『社長えんま帖』(1969年、東宝)は33作上映された森繁久彌社長シリーズ30作目。新メンバー加入と唐津くんちの迫力ロケが見所
『社長えんま帖』(1969年、東宝)は、33作上映された森繁久彌社長シリーズの30作目である。小沢昭一、藤岡琢也、そして関口宏と内藤洋子が新たにシリーズに登場。地方ロケ地では唐津くんちを紹介し、また本作は自家用セスナで移動するなど従来にない新機軸が設定されている。

社長シリーズ30本製作記念作品

本作『社長えんま帖』は、当時のポスターにも“30本製作記念”と印刷されている。

『社長えんま帖』新メンバー加入と唐津くんちの迫力ロケ

本作で印象に残るシーンといえば、なんといっても「祭り期間中の人出は延べ50万人を超える」「国の重要無形民俗文化財」(Wikiより)である佐賀・唐津のお祭り・唐津くんちのシーンである。

『社長えんま帖』新メンバー加入と唐津くんちの迫力ロケ

本物の曳山のド迫力、巡行のスピード感などがリアルに撮れている。

森繁久彌社長と、本作のマダムズの一人である団令子、宴会部長の小沢昭一、バイヤーの藤岡琢也、秘書の関口宏が唐津までやってきて、唐津見学をしていて唐津くんちにぶつかったという設定である。

本作は、現実社会の出来事をストーリーに組み込んでいるが、今回も本物の唐津くんちである。

本物の唐津くんちの迫力

映画では、まず唐津神社の鳥居をアップで写し、そこからひいて14台の曳山が巡行するシーンが映しだされる。

実際に、唐津くんちに参加した人に話を聞いている。

唐津くんちに参加した人に話を聞いている

巨大な曳山が、笛や太鼓、鐘など「鳴り物」に合わせて曳き子たちの掛け声とともに、旧城下町を練り歩く。

社長シリーズは観光映画ともいわれるが、今回ほどロケのシーンに魅入られたことはない。

唐津くんち

先導する警官がリアルで、看板や建物も昭和40年代の雰囲気が出ている。

ただ、社長シリーズ全体から見ると、今作『社長えんま帖』は、“30本製作記念”であるとともに、シリーズの“ラス前”になってしまった。

言うまでもなく、社長シリーズは、60年代の東宝の屋台骨を支える人気シリーズだった。

が、本当は『続・社長紳士録』で終了するつもりだったのを、また再開したことで、マンネリを防ぐために新しいことをしようと思ったのか、27作目の『続・社長千一夜』をもって、三木のり平、フランキー堺とレギュラーが降板したり、森繁久彌社長の浮気しそうな相手であるマダムズも入れ替えたりした。

しかし、それが逆に、社長シリーズの「終わりの始まり」になったのかもしれない。

映画自体が斜陽化したこともあるだろう。

そう考えると、少し寂しい気もする。、

自家用機で大阪から唐津へ

今回は化粧品会社が舞台である。

社名はマルボー化粧品。これは誰が聞いてもカネボウ化粧品のもじりであろう。

朝、自社の製品をつけることを日課としている森繁久彌社長だが、久慈あさみはそれを切らしてしまい、試供にセールスマンがおいて行った外国製を使おうとして森繁久彌社長に注意されるところからストーリーは始まる。

今回は、浦山珠実のお手伝いさんに、娘役が2年ぶりに岡田可愛。

朝からデモに行き、両親を呆れさせている。東大安田講堂事件の年の作品らしい設定である。

そして、社内は企画宣伝部長が小林桂樹、総務部長が加東大介、営業部長(宴会担当)が小沢昭一である。

小沢昭一は宴会担当だが、ちょっとネクラである。

自分の意見が尊重されないと感じると、執念深くそれを根に持つ。

この日も、自分が紹介したいバイヤー(藤岡琢也)を受け入れられないことで、へそを曲げていた。

森繁久彌社長は、養子であったり、親会社があったりと、毎回窮屈な立場なのだが、今回もやはり大阪に親会社があり、大社長が東野英治郎である。

横にはいつも看護婦と称する愛人(沢井桂子)が付き添っている。

前作『社長繁盛記』ではマダムズだったが、森繁久彌社長が、浮気しそうで未遂に終わる相手役、今回のいわゆるマダムズは、草笛光子と団令子である。

では、いつもフランキー堺が演じていた取引先の怪しいバイヤーはというと、今回は日系アメリカ人という設定で藤岡琢也が演じている

秘書役も交代となった。黒沢年男に代わって関口宏である。

そして、その恋人役として、小林桂樹の妹という設定で内藤洋子が登場している。

内藤洋子は三越の店員という設定になっている。

実在のデパートにしているということは、撮影に協力をしてもらうなど、何かタイアップがあったのだろう。

関口宏が、そこに現れ食事に誘う。

行く先はカレーショップだが、関口宏が食べるカレーの皿と盛りは、どう見ても内藤洋子のよりも二回りは大きい。

それを、さくさくとスプーンで口に運ぶ関口宏がアップで映ると、観ている方もカレーをもりもり食べたくなってしまう。

さて、ストーリーは、東野英治郎大社長に、「攻撃は最大の防御」とはっぱを掛けられた森繁久彌社長は、いったんは怪しがって会うのを断った日系バイヤー・藤岡琢也と会うことにする。

そして、関口宏がかねてから勧めていた自家用セスナ機も購入する。

例によって京都の芸者、団令子と浮気をしようと大阪でおちあうが、そこで藤岡琢也と小沢昭一にばったり出くわしてしまう。

そして、唐津に視察に行くと出任せを言うと、藤岡琢也も一緒にいくと言い出し、全員がセスナ機で唐津に行くことになる。

その際、森繁久彌社長は、東野英治郎大社長の真似をして、団令子を看護婦ということにして付き添わせる。

藤岡琢也は、仮病を使って団令子に診察してもらおうとする。

一方、関口宏は、内藤洋子との関係が怪しくなったまま唐津にきたため、小林桂樹に電話をかけ、「僕はもうダメです」と弱音を吐く。

小林桂樹がそれを大事と捉え、加東大介と久慈あさみに連絡。

2人が翌朝、唐津のホテルにかけつけると、森繁久彌社長の隣で誰かが寝ているので、一瞬久慈あさみは誤解するが、それは小沢昭一だった。

本編と続編でひとつのストーリー

藤岡琢也との契約は、本編ではまとまらず、続編で締結される。

加東大介も、セットシーンだけの出演なので、おそらくは唐津に行っていないと思われるが、ストーリー上は行ったことになっている。

つまり、小林桂樹だけが、今回地方ロケにストーリー上も実質も参加していない。

当時のスケジュールはわからないが、続編では司葉子とともに地方ロケに参加しているので、あえて参加しなかったのだろう。

つまり、関口宏の秘書役の存在感をそれだけ重くしたかったのかもしれない。

関口宏は、ずいぶん良い扱いだったわけである。

以上、『社長えんま帖』(1969年、東宝)は33作上映された森繁久彌社長シリーズ30作目。新メンバー加入と唐津くんちの迫力ロケが見所、でした。

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