『おばさん』は浜口庫之助が手がけた叙情歌

『おばさん』は、森昌子16枚目のシングルである。片思いの歌で徐々に演歌の世界に入ってきた森昌子だったが、ここでまた身近な人叙情歌を歌っている。これまで森昌子というと、作詞は阿久悠、作曲は大御所の遠藤実が主にかかわっていた。とくに今回のような抒情詩ソングはそうだったのだが、今回は浜口庫之助が初登場。しかも、作詞も作曲も行っている(B面作詞だけは及川恒平が担当)点が目新しい。

浜口庫之助といえば、ハワイアンバンド・浜口庫之助とアフロ・クバーノで紅白歌合戦に出場。作詞・作曲家としても、『黄色いさくらんぼ』『僕は泣いちっち』『愛して愛して愛しちゃったのよ』『星のフラメンコ』『バラが咲いた』『人生いろいろ』(作詞中山大三郎)など、60年代~80年代にかけて幅広いレパートリーでヒット曲を量産してきた。

その大御所が、ついに森昌子の歌を手がけたのである。花の中三トリオの中で、もっとも大物作家から歌を作ってもらったのは森昌子といって間違いない。彼女の実力はそれだけ評価されていたのである。

学園叙情歌から身近な人叙情歌へとシフトした森昌子。今度は「おばさん」が対象である。風邪を引いて寝ているというハガキを読み、見舞いに訪ねるときの、はやる心の中を歌っているのだ。

昔は、夏休みになると田舎の親類の家にずっと世話になるという子どももめずらしくなかった。家制度の名残からか、田舎の本家が分家について面倒を見るという考え方があったのかもしれない。

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財産分与をきっちりして、長男とか本家といった曖昧な責任や負担が良くも悪くもなくなりつつある現代では、親類の付き合いは冠婚葬祭ぐらいという場合も少なくない。

そんな世代にはわかりにくい「思い」であろう。

『おばさん』(1976.3.1)

おばさん

おばさん/能登の海
作詞者 A面:浜口庫之助 B面:及川恒平
作曲・編曲者 A面:浜口庫之助(編曲:高田弘) B面:浜口庫之助(編曲:高田弘)
ミノルフォン

B面の作詞を担当した及川恒平は、自らがフォークシンガーとしていろいろな仕事をしている。

青山学院大学時代に小室等率いる六文銭に加入。そう、六文銭といえば上条恒彦が絶唱した『出発の歌』だ。それが第2回世界歌謡祭グランプリを獲得して一躍脚光を浴びた。

以後も単独でアルバムをリリースしたり歌謡曲やCMの作詞・作曲を手がけたりしている。

フォークシンガーと森昌子という組み合わせは一見意外に見えるかもしれないが、『能登の海』の作詞は、及川恒平のフォークシンガーとしてだけではなく80年代の楽曲提供者としての活躍につながる一作である。

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