『喜劇駅前温泉』(1962年、東京映画/東宝)の舞台は福島県郡山市の岩代熱海(現磐梯熱海)。温泉旅館協会主催町おこしの場面では、今や大御所の赤木春恵も水着姿で頑張っています。昭和30年代(1960年代)の猪苗代湖、磐梯吾妻スカイラインなど福島山間部のロケーションも懐かしい。
昭和37年(1962年)、高度経済成長の熱気に包まれた日本。
映画界は現代のそれとは比較にならないほどの予算と熱量を投じ、大衆を熱狂させていました。
実在する地名や社会問題を舞台に展開するヒューマンコメディとして、東宝の屋台骨を支えた24作の人気シリーズだったのが喜劇駅前シリーズです。
今回紐解くのは、東宝の人気シリーズ第4弾『喜劇 駅前温泉』です。
あらすじ
さびれゆく温泉街と意地を張り合う二人の主人 奥の温泉場にデラックス・ホテルが建って以来、駅前温泉は客足が遠のき、さびれるばかりでした。
観光協会の対策理事会では、福屋の主人・徳之助が「誠実なサービスが肝心」と主張するのに対し、極楽荘の主人・孫作は「時代に合ったセンスを取り入れるべき」と反論して譲りません。
来月に迫った協会長の選挙の件でも、二人は虎視眈々と互いを牽制し合っています。
孫作がアンマ屋の思いつきで取り入れた「水着アンマ」は客を喜ばせますが、そのあおりでお座敷がかからなくなった姉芸者の金太郎はご機嫌ななめになってしまいます。
また、スズラン美容室の景子が店の拡張のために協会へ融資を頼みに来ると、徳之助と孫作は「その話なら個人的に援助したい」と見栄を張ってまたもや対立します。
交差する人間模様と珍騒動 ある日、景子を訪ねて東京から旧友の恵美子がやってきます。
夫との仲がうまくいかず家を出てきたという彼女が福屋に泊まり、徳之助がアンマを揉むことになりますが、妻を亡くして3年の徳之助は彼女の悩ましい体にむせ返ってしまいます。
その後、恵美子を迎えに来た夫の三平が、実は戦地で徳之助班長の部下だったという奇遇が重なり、無事に仲直りした夫婦は東京へ帰っていきます。
一方、観光協会事務局長の坂井次郎(みやげ物屋)は、店名物の「ラジューム卵」が景子の美容室で美顔パックとして愛用されており、金太郎の妹芸者・染太郎とも良い仲です。
飯坂で開催された県下温泉地の「三助コンクール」では、審査員の金太郎が私怨から孫作に悪い点数をつけ、会場が大混乱に陥る騒動も勃発します。
親の対立と子供たちの恋の行方 孫作が経営するレストハウスで支配人を務める幸太郎は、犬猿の仲である徳之助の娘・夏子と内緒の恋仲でした。
しかし、自分の娘の婿に幸太郎を迎えようと考えていた孫作の妻・とよは、二人の関係を知って激怒し、幸太郎をクビにしてしまいます。
さらに、幸太郎が実は「孫作とかくし女の間に生まれた子供」であったことまで発覚し、事態は複雑になります。
しかし、最後はスズラン美容室が「温泉美容研究所」と改称し、次郎は協会事務局長に正式就任、そして様々な騒動を乗り越えて幸太郎と夏子も無事に結婚を果たします。
こうして駅前温泉は、めでたい出来事ばかりに包まれて大団円を迎えます。
森繁と伴淳の対立は?
ストーリーの核となる、森繁久彌(福屋の主人・徳之助)と伴淳三郎(極楽荘の主人・孫作)の対立は、主に寂れゆく温泉街に客をどう呼び戻すかという「方針の違い」から生じています。
「誠実なサービス」か「お色気路線」か
奥の温泉場にデラックス・ホテルが建ったことで駅前温泉はさびれており、観光協会の対策理事会で議論が交わされます。
保守的な森繁久彌が「誠実なサービスが肝心」だと力説するのに対し、伴淳三郎は「時代に合ったセンス」を取り入れるべきだと反論します。
伴は実際に、マッサージ業者に水着を着せる「水着アンマ」といったエロティックなサービスを導入しようとし、両者は激しく対立します。
観光協会の次期会長ポストをめぐる争い
方針の違いだけでなく、来月に迫った観光協会の会長選挙の座をめぐっても、二人は虎視眈々と互いを牽制し合っています。
女性への融資をめぐる見栄の張り合い
スズラン美容室の景子(淡島千景)が店の拡張のために協会へ融資を頼みに来ると、二人は「それなら個人的に援助したい」と申し出て、ここでも張り合うことになります。
この強烈な二人の間で、観光協会事務局長の坂井(フランキー堺)がオロオロと右往左往する姿が描かれます。さらに、親同士はこうして意地を張り合って対立しているにもかかわらず、それぞれの子供たち(夏木陽介、司葉子)は内緒で恋仲(熱々カップル)であるという展開が、二人の対立をよりコミカルに引き立てる要素となっています。
見どころ
見どころとして、主に以下の4点が挙げられています。
「駅前トリオ」のズーズー弁と豪華役者陣の共演
森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺らお馴染みの「駅前トリオ」によるズーズー弁での絶妙な掛け合いや、多分にカリカチュア(誇張)された登場人物たちの右往左往ぶりが見どころです。
さらに、池内淳子、森光子、司葉子、淡島千景、淡路恵子といった、そうそうたる豪華女優陣が脇を固め、巧みな演技を披露している点も大きな魅力となっています。
王道の喜劇的設定(対立する親と恋仲の子供)
「誠実なサービス」を主張する保守的な森繁久彌と、「エロティックなサービス(水着アンマなど)」を導入しようとする伴淳三郎が激しく対立し、その間でフランキー堺がオロオロするという構図が展開されます。
親同士は意地を張り合っているのに、それぞれの子供たち(司葉子と夏木陽介)は内緒でアツアツのカップルであるという、喜劇映画にありがちな定番の設定が物語をコミカルに盛り上げます。
会津磐梯山の風光明媚なロケーションと「福島民謡」
当時スカイラインが開通したばかりの会津磐梯山を舞台にしており、現地の温泉と全面的にタイアップした美しいロケーションや、高度経済成長期の活気ある日本の姿がスクリーンに描かれています。
また、劇中のお座敷のシーンやBGMとして流れる「福島の民謡(相馬の民謡など)」が、昭和の懐かしい郷愁を誘う要素として高く評価されています。
若き日の名女優たちの貴重な奮闘姿
のちにテレビドラマで「お母さん」や「お姑さん」役として広く親しまれることになる赤木春恵が、マッサージ業者役として出演しており、「三助コンクール」のシーンでは水着姿になって奮闘する若き日の姿を見ることができます。
また、1960年代にセクシー女優として一時代を築いた三原葉子も、伴淳三郎の旅館で客の背中を流す女性役として(控えめなワンピース水着姿で)出演しています。
DVDやPrime Videoなどでご鑑賞ください。
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