『ブラボー!若大将』失恋と失業を経験する三十路の若大将

 

ブラボー!若大将
『ブラボー!若大将』(1970年、東宝)は、若大将シリーズの第15弾となる作品である。70年の1月1日公開。すなわちお正月映画だが、普通は前年年末から封切られるお正月映画も、この作品については元旦封切りだったのである。この作品から、2代目若大将となる大谷茂が出演している。監督、脚本は、もちろん、岩内克己、田波靖男のコンビである。

まずはネタバレ御免のあらすじから

田沼雄一(加山雄三)の今回の設定は、住宅設備総合商社の三矢物産営業部勤務。

熊井鉄工の熊井社長(熊倉一雄)から売り込みを受けた住宅用鉄材は、100万円でも家が建つという庶民のマイホームの夢を実現するための画期的な素材だった。

雄一(加山雄三)は、さっそく企画書を作成し、岩崎部長(松村達雄)に提出。

その場で「検討したい」という前向きな回答をもらったが、会社は裏で、大手の鉄工会社と事業提携を進めていた。

企画だけ横取りするようなことはできないと雄一(加山雄三)は抗議し、三矢物産に辞表を叩きつける。

もちろん、この意思に偽りはなかったが、辞表提出は「焦ってんだろう」という同僚(小鹿番)の声もあった。

というのは、交際していた浜野百合子(高橋紀子)に、「私たちは結婚しても幸福になれない」とフラレてしまったのだ。相手は銀行の頭取だという。

失意の雄一(加山雄三)は、グァム島でガイドのアルバイトをして、糊口をしのぎつつ傷ついた心を癒やしていた。

そこにあらわれたのが、石山エンタープライズの店員・松井節子(酒井和歌子)。

友人と遊びに来ていたのだが、せっちゃんは、雄一(加山雄三)が百合子(高橋紀子)のために、装身具を買いに来た時の店員だったので、雄一(加山雄三)のことを覚えていた。

そこで、2人の関係はぐっと盛り上がるのだが、いつものように、そこにいじわるをするのが青大将こと石山進次郎(田中邦衛)である。

せっちゃんが、自分が親の七光りで専務をしている会社の社員と知ると、さっそく意地悪と横恋慕を始める。

雄一(加山雄三)の仕事を世話する条件にせっちゃんを秘書にしたり、グァム島の出張にせっちゃんを同行させたり、2人のデートのときに下剤入りのウイスキーを雄一(加山雄三)に飲ませようとして失敗したりする。

一方、実家の田能久では、江口(江原達怡)が「インスタントすき焼き」の企画を持ち込んだ業者に入れ込み、50万円、店のお金を使い込んでしまう。

久太郎(有島一郎)は、店の帳簿が合わないことから 江口(江原達怡)に不信感をいだき、りき(飯田蝶子)に、やはり跡継ぎは雄一(加山雄三)にしたいと打ち明ける。

照子(中真千子)からも相談を受けた雄一(加山雄三)は、例によって江口(江原達怡)使い込みの責任を引き受け、勘当こそされていないが田能久から消える。

そして、大学のテニス部後輩・大木(大矢茂)の要請を受けて、大学で寝泊まりをしながらアルバイトを続ける。

そんなとき、熊井社長(熊倉一雄)とバッタリ再会。

事情を知った熊井社長(熊倉一雄)は、自分の会社に来ることを勧め、雄一(加山雄三)もそれを受け入れる。

熊井鉄工が資金難であることを知ると、雄一(加山雄三)は自分を雇ってくれた恩返しと、資金繰りに例の住宅用鉄材を安売りしようとしていることを止めるため、百合子を通じて銀行頭取の夫に融資を頼んだ。

そこで再会した雄一と百合子が踊るところを節子が見つけてしまう。

いつものように誤解する節子は、石山(田中邦衛)とのグァム島行きを了承する。

三矢物産は結局、熊井鉄工と合弁会社をつくり、雄一の社長就任と、三矢物産時代に雄一の上司だった西岡課長(藤岡琢也)の役員就任を提案。

雄一に異存はなかったが、「相談したい人もいるので2~3日考えさせて欲しい」ともったいぶり、グァム島へ飛んでせっちゃんと合流してハッピーエンド。

三十路に入った若大将

若大将といえば、スポーツも恋も趣味(音楽)もこなす、明るく楽しく順風満帆な学生生活であり、また社会人生活のはずであった。

しかし、本作の若大将は、試練が訪れる。

交際中の女性には、もっと社会的な肩書のある人と結婚すると言われ、会社をやめていったんは日本を逃げ出す。

さらに、そのフラれた女性に頭を下げ、その夫に金策を頼むのである。

人生、どんな人でも山もあれば谷もあるだろうが、若大将にも谷はあったわけだ。

もとい、若大将という設定自体が変わりつつあった。

劇中、「若大将」というセリフが出たのは1度。

「義兄さん」と呼び続ける江口が、大学のテニス部に肉を差し入れる時だけである。

つまり、実年齢で三十路に入った加山雄三も、さすがにシリーズ開始当初の「若大将」のままというわけにはいかなくなったということである。

ヒロインのせっちゃんも、すみちゃん(星由里子)ほど激情家ではない。

一応、誤解したりやきもちを焼いたりはするが、「私はヤキモチ焼き」と素直に告白しているし、控えめな所が良い。

毎度おなじみのようでいて、やはりそこは人間が演じているだけに、時のうつろいを無視することはできないわけだ。

ただ、変わらないところもある。

飯田蝶子のおちやめさや、どう考えても犯罪行為なのに、次のシーンでは何事もなかったかのように許されている青大将の横恋慕などは例によって「お約束」である。

東宝が、60年代中盤から約10年、日本テレビで放送した青春学園ドラマを筆頭に、80年代前半ぐらいまで、青春ドラマは主人公がアパートではなく下宿に住むことが多かった。

これは、若大将シリーズの田能久のあたたかさがもとになっているのではないかという気がする。

なお、今回のグァム島ロケは、シリーズ最後の海外ロケになった。

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