東宝喜劇映画は、このブログ「市井考房」で何度か、いわゆる東宝クレージー映画や、森繁久彌の社長シリーズのレビューを書いたが、今日のキーワードは、植木等や森繁久彌ではなく、11日が祥月命日にあたる、同作に出演していた久慈あさみと宮田洋容である。
映画が少しずつ斜陽化しながらも、何本ものシリーズを公開した東宝喜劇映画黄金時代の1960年代、久慈あさみと宮田洋容はいろいろな作品に出演している。
昭和の東宝映画ファンであれば、久慈あさみも宮田洋容ももちろんご存知と思うが、2人が揃って出演した作品といえば、やはり思い出されるのは森繁久彌の社長シリーズだろう。
現在『東宝昭和の爆笑喜劇』(講談社)シリーズの最新刊に『社長外遊記』が収録されている。
その中で、もちろん久慈あさみは森繁久彌社長婦人役。宮田洋容は、森繁社長のデパートでネクタイを買う役で出演している。
久慈あさみは、宝塚の2期後輩にあたる越路吹雪の後を受けて、森繁久彌社長の妻役としてシリーズに出演し続けた。
東宝と専属契約していたが、社長シリーズと若大将シリーズ以外ほとんど出演していなかったと思う。
一方の宮田洋容は、本職は宮田洋容・布地由起江というアコーディオン漫才らしいが、私は見たことがない。
山茶花究(あきれたぼういず)や、人見明(人見明とスイング・ボーイズ)、フランキー堺(フランキー堺とシティ・スリッカーズ→日活)、そして植木等(ハナ肇とクレージーキャッツ)など、音楽とお笑いができる人を東宝は次々起用しているが、リズムで芝居ができるという狙いでもあったのだろうか。
それはともかく、宮田洋容は役はそれほど大きくはないが、お姐ちゃんシリーズ、クレージー映画シリーズ、社長シリーズ、おトラさんシリーズなど、50年代~60年代の東宝喜劇映画にまんべんなく呼ばれている。
東宝サラリーマン映画100本目と銘打たれた『サラリーマン忠臣蔵』(1961年)では、加東大介部長と行動を共にする森繁久彌専務派の課長役を演じた。
だが、2人が「共演」したのはそれだけではない。
いわゆる東宝クレージー映画の第一作にあたる『ニッポン無責任時代』(1962年)にも久慈あさみと宮田洋容は出演している。
久慈あさみは、ハナ肇社長の夫人役。宮田洋容は、団玲子演じる芸者が飲酒運転していた車を止めて検問する警官の役である。
宮田洋容はともかくとして、久慈あさみがハナ肇夫人というのは少し苦しかったか。何しろ、久慈あさみの方が実年齢で8歳も年上なのだから。
そんなこといったら貴乃花親方に叱られるか。
もちろん、社長シリーズの「実績」で久慈あさみになったのだろう。
宮田洋容が鬼籍に入ったのが1983年、久慈あさみが1996年だった。
いずれにしても、東宝喜劇映画黄金時代を支える役者であったことは覚えておこう。