昭和映画・テレビドラマ懐古房

『夕暮れはラブ・ソング』を歌いドラマにも主演した桜田淳子

『夕暮れはラブ・ソング』は桜田淳子31枚目のシングルリリース。TBS系ドラマ『愛の教育』の主題歌である。歌とドラマ自体はセールス的に大成功とはいえなかったが、この間も女優としてのポジションはしっかりと固めつつあった。新宿コマでミュージカル『アニーよ銃をとれ』にも初主演した。

『愛の教育』は桜田淳子自身が主演した。TBSの“木10”通称木曜座、つまり木曜日22時の枠で7月第2週から10月第1週までの1クール(13回)放送された。

ストーリーは、秋田で女手ひとつで農業を営んでいた母親が亡くなり、四十九日の法要で一区切りつけた桜田淳子演じるユキが、東京のおもちゃ工場に就職。叔父の敬造(夏木勲)からは「おまえは俺の子供だ」と出生の秘密を告げられる。一方、ルポライターの藤代(大谷直子)はある事件で敬造を追っていた。この三者を中心に物語が進んだ。

ドラマの質としては決して悪くなかったが、名作として語り継がれることはない。視聴率的にも化けることはなかった。歌自体もセールスは1.9万枚。歌手としての桜田淳子の立ち位置が「夕暮れ」になってしまった。

この頃の山口百恵フィーバーが、同じ「花の中三トリオ」で売りだした者としても何らかの影響があったかどうかはわからないが、彼女のセールスを追うと、やはり大人への路線変更を試みたあたりから彼女の下降線をたどっていると言わざるを得ない。

ドラマにしても、日本テレビの『てんつくてん』や『となりのとなり』、松竹映画の『スプーン一杯の幸せ』など、明るいホームドラマや青春ストーリーでささわやかな少女像を確立した彼女にとって、大人のドラマへの転換は思いの外、評価を得ることがむずかしかったようだ。

『夕暮れはラブ・ソング』(1980.7.21)


夕暮れはラブ・ソング/ひと房の葡萄
作詞者 A面:岡本おさみ B面:藤公之介
作曲・編曲者 深町純(編曲も)
ビクター音楽産業

もっとも、女優としての可能性はこの時期グングン膨らんでいる。次の『化粧』のリリースまで時間があるが、この年の10月に新宿コマでミュージカル『アニーよ銃をとれ』に初主演している。

16年前に江利チエミが同じコマ劇場で初演したものだが、その時に音楽監督をつとめた神津善行が積極的な評価を与えた。

「線は細いが実に立派な演技であり、江利嬢に優るとも劣らないすばらしいものであった」(『週刊朝日』80年11月14号で神津善行)。

それ以外にも「一スター歌手にとどまらず、ミュージカル・スターとして新たな旅発ちをした」(Columm[シアターノート]Playで小田島雄志)「体もよく動くし表情もいい。乱暴なしゃべり方がまたファニーな魅力でかわいらしい」(『演劇界』)さらには、「百恵ちゃんフィーバーの中で淳子ちゃんが新しいジャンルに挑戦した姿勢に拍手」という主婦の投書もあった(『読売新聞』)。

そう、百恵ちゃんは百恵ちゃんの道を、私は私の道を行く……。彼女はそんな決意のもとに新たなステージにチャレンジしたのかもしれない。

桜田淳子は同年の芸術祭大衆芸能部門(2部)優秀賞を、当時史上最年少で受賞することになった。

アイスルジュンバン

  • 作者: 桜田 淳子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: 単行本

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