昭和映画・テレビドラマ懐古房

『しなやかに歌って』を歌い三浦友和との結婚を発表した山口百恵

『しなやかに歌って』は、山口百恵27枚目のシングルである。緩やかな優しい楽調は、まさに彼女の私生活をあらわすものだった。この歌のリリース前に山口百恵は、三浦友和と結婚する意志を対外的に打ち明けている。おそらくは周囲に彼女の幸福そうな心住まいが伝わったのだろうし、事実彼女自身、今までにない心の余裕のようなものが生まれた時かもしれない。

モモトモはついに私生活でも結ばれた。おそらくそうではないかと思っていたマスコミも世間も、かといって証拠も本人たちの声も聞いたことがなかったが、いよいよ週刊誌がそれを報じることとなった。

1979年10月20日、交際がすっぱ抜かれた『フォーカス』発売翌日に、山口百恵は大阪のコンサート会場で、「私の好きな人は、三浦友和さん」と宣言した。逃げ隠れする必要もないし、山口百恵自身、そういう性分でもなかったのだろう。

同じ日に東京では三浦友和が会見。両方の記者会見に出席した芸能リポーターの梨元勝は、自分だけが経験できたと思っていたが、「梨元が慌てて出て行ったから、何かあると思って跡を付けた」という鬼沢慶一もちゃっかり同席していた(『週刊文春』)。

この頃はビッグスターにヒューマンインタレストがあり、テレビのワイドショーも現在より積極的にそれを報じていたため、リポーターも生き生きしていた。多少は行き過ぎた取材もあったかもしれないが、今よりは芸能記事が楽しかった。

『しなやかに歌って』。スローテンポではあったが、横須賀ツッパリ娘路線の山口百恵にはめずらしく優しい曲調だった。まるで、頑なに突っ張っていた女の子が、好きな人を得て女性として豊かに変化していったようである。

それは、まさに彼女のリアル人生そのものだったのだ。この歌のジャケット写真の打ち合わせをしている時に、酒井政利と篠山紀信がいる前で、山口百恵は三浦友和のことを打ち明けている。もちろんその時点で、彼女の決意は揺るぎないものだった。つまり、結婚だけでなく、引退の(相談ではなく)報告を行ったと思われる。

『しなやかに歌って』(1979.09.01)


しなやかに歌って/娘たち
作詞者 阿木耀子
作曲・編曲者 A面:宇崎竜童(編曲:川口真)B面:宇崎竜童(編曲:萩田光雄)
CBS・ソニー

このリリースから間もなくして、恒例のモモトモ東宝映画の撮影が始まった。藤田敏八監督の『天使を誘惑』である。

原作は高橋三千綱。ストーリーは、同棲している男女がいろいろな出来事を経験しながら2人の愛を確かめ合う話。恋人宣言していた山口百恵と三浦友和が、台本を超えてお互いを思う気持ちを演じたと評価は高い。

そう、ここにきてようやっと、文芸路線でもリメイクでもない、百恵独自の脱アイドル青春路線が見えてきたのだ。

隔週刊 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン 2014年 3/11号 [分冊百科]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: 雑誌

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