『ほお紅』は森昌子44枚目のリリースである。当時放送されたフジテレビ系ドラマ『女の暦』の主題歌。同じ「昌子」の京塚昌子最後の主演作品だった。『メモ用紙』を『ちょっとは、ダラズに。~鳥取発地域ドラマ~』で歌ったことで「30年ぶりの主題歌」となった。『涙雪』の作詞は秋元康。おニャン子クラブやAKB48でお馴染みのだが、稲垣潤一の『ドラマティック・レイン』で注目された頃の作品である。
『女の暦』は平岩弓枝ドラマシリーズ。京塚昌子と田村亮が親子を演じる下町のおでん屋の話である。例によって、夫なき京塚昌子が、おでん屋を切り盛りするのだが、『肝っ玉母さん』と違うのは、最後には店を畳んでしまうことである。
おそらくそこには意味があったのだろうと思う。。
京塚昌子が『肝っ玉母さん』を演じるには年を取って痩せてしまったことや、テレビドラマが2時間ドラマやトレンディドラマなど、ホームドラマ全盛の70年代にかわって新しい時代に入ってきたことなどから、これが京塚昌子の最後の主演番組になったのである。
時代は変わる。肝っ玉母さんも永遠ではなかったのだ。ちょっと寂寥感ある話ではないか。
しかし、頼もしい母親が活躍するという、昭和40年代のホームドラマの一潮流を担った彼女の功績がいささかも損なわれるわけではない。同じ「昌子」のよしみで、森昌子が主題歌を歌ったのは記念すべき仕事になったのではないだろうか。
その『女の暦』以来、30年ぶりの主題歌と話題になったのが、鳥取・米子市を舞台にしたNHK BSプレミアムドラマ『ちょっとは、ダラズに。~鳥取発地域ドラマ~』の『メモ用紙』である。
こちらは森昌子自身がドラマの展開上、重要な役どころで出演した。彼女が「とっとりふるさと大使」に選ばれ、鳥取にスターバックス誘致を約束したことは、『小雨の下宿屋』の記事 で書いたとおりである。
『ほお紅』(1984.10.5)
ほお紅/涙雪
作詞者 A面:SHOW B面:秋元康
作曲・編曲者 A面:小杉保夫 B面:芹沢広明(編曲:小六禮次郎)
キャニオン
B面は『涙雪』である。作詞・作曲は演歌としては意外な名前が並んでいる。秋元康は、稲垣潤一の『ドラマティック・レイン』を作詞して名前が知られた頃で、おニャン子クラブとソロデビュー組でヒットを連発する前のことである。
詞はひとつの愛の終わりを歌ったものだが、芹沢廣明の提供した曲とうまく噛み合ってしっとりとしたいい歌に仕上がっている。
その芹沢広明は、かつてグループ・サウンズのバンドザ・バロンでギターを担当。自らソロをリリースしたこともある。必ずしも演歌系を中心にした作曲活動ではないが、演歌の泣かせどころを逃さない曲である。