昭和映画・テレビドラマ懐古房

『パーティー・イズ・オーバー』を歌った頃女優開眼した桜田淳子

『パーティー・イズ・オーバー』は、桜田淳子28枚目のシングルである。今までとは異なる大人の路線だったが、今回も当たらなかった。歌手としてはアイドルから大人への路線転換に成功したとはいえなかったのかもしれない。その一方で、女優としてはこの時期、いろいろな作品に出演して実績を積み重ねている。

「花の中三トリオ」だった桜田淳子もこの時点で21歳。いよいよ待ったなしで大人の歌へのシフトが鮮明となっているが、『パーティー・イズ・オーバー』のセールスは2.5万枚と、ひと頃の桜田淳子では信じられないような出来だったのは残念である。

『オーバー』というタイトルで思い出すのは、欧陽菲菲の『ラヴ・イズ・オーヴァー』作詞者は伊藤薫だが、この歌も須藤薫の提供である。

ところで、伊藤薫は、このリリースの1ヶ月前に『ラヴ・イズ・オーヴァー』に詞を提供している。もともとはB面だったものだった。ヒットした時期とずれていると思われるかもしれないがそのとおりで、欧陽菲菲が歌い続けて何と4年後の83年にブレイクしている。

ヒット曲というのは偶然と必然で産まれるものだという典型的な例である。必然とは歌の質であり、偶然とはそのときの社会的なニーズや他の曲など市場との兼ね合いである。

桜田淳子の『パーティー・イズ・オーバー』も決して歌の質は悪くないように思う。欧陽菲菲のように、彼女もずっと歌い続ければいつかは……という「れば、たら」の話を始めたらキリがないか。

中学生アイドルとしてデビューして順調な歌手生活を長く送ってきたのだから、いずれにしてもこのくらいの壁というか不運はあるのも不思議ではないかもしれない。むしろ、こうした不運・不発の時期が、彼女に女優としての方向性を明確に自覚させる原動力となったのではないだろうか。

『パーティー・イズ・オーバー』(1979.8.25)


パーティー・イズ・オーバー/まわれ私の恋よ
作詞者 A面:伊藤薫 B面:門谷憲二
作曲・編曲者 A面:伊藤薫(編曲:松井忠重) B面:馬場孝幸(編曲:椎名和夫)
ビクター音楽産業

この頃、桜田淳子は連続ドラマに出演した。ガラス工場を舞台にした、加山雄三の「パパ」シリーズ第三弾と銘打たれた『かたぐるま』である。

ここで彼女は、単発ドラマ『初恋・通りゃんせ』(78年5月)で仕事をした脚本家・ジェームス三木の連続ドラマを初体験。これが後の連続テレビ小説の『澪つくし』(85年、NHK)や、大河ドラマの『独眼竜政宗』(87年、NHK)の出演に繋がっていく。

女優として大きく飛躍するには、演技そのものも大切だが、ブランディングも必要である。そのためには、ひとつの思想をしっかり持った演出家や脚本家と出会い、その人に辛抱強く使ってもらうことが求められる。

桜田淳子にとってそれはジェームス三木だったのかもしれない。

アイスルジュンバン

  • 作者: 桜田 淳子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11/24
  • メディア: 単行本

モバイルバージョンを終了