『プレイバックPart2』は、山口百恵22枚目のシングルである。これは「花の中三トリオ」から横須賀ツッパリ娘への路線転換の象徴的な歌といえる。映画は『ふりむけば愛』に出演。オリジナルストーリーでセミヌードとベッドシーンを経験。山口百恵はいよいよ大人の女の路線を歩んでいく。
『プレイバックPart2』は、曲の途中で演奏が一時止まったり、「プレイバック」をリフレインしたり、「Part1」のシングルがない(アルバムには収録)のに「Part2」というタイトルが付いていたなど、何かと興味を引く歌だった。
その斬新さはセールスにもつながり、50万枚を突破したクリーンヒットとなった。
ところが、これでもオリコン1位はならなかった。ピンク・レディーの『サウスポー』や、資生堂のCMソングにもなった矢沢永吉の『時間よ止まれ』が頑張っていたからである。
矢沢永吉の『時間よ…』は、ライバル社のカネボウがサーカスの『Mr.サマータイム』を採用して激しく競い、『Mr.サマータイム』も100万枚を売り上げている。夏の化粧品のすさまじく熱い戦いは消費者の掘り起こしにつながったのだろう。
この時代は1位になるのがそれだけ難しい時代だったのだ。歌う本人にとっては大変だが、受け手とすれば古き良き時代だったと言っていい。
『プレイバックPart2』(1978.05.01)
プレイバックPart2/賭け
作詞者 阿木燿子
作曲・編曲者 宇崎竜童(編曲:萩田光雄)
CBS・ソニー
恒例のお盆映画は8作目の『ふりむけば愛』。リメイクや原作を持たない発出作品に初めてチャレンジすることになった。これは画期的なことである。
『伊豆の踊子』とは違い正真正銘、山口百恵のセミヌードによるベッドシーンがあった。『蒼い時』には、そのときの心理がリアルに書かれている。
強化ガラスの上での特殊撮影で、スタッフの気遣いに囲まれ、撮影自体は笑顔で臨んだものの……「その時すでに、彼に対して愛を感じていたからなのだろう。彼がいてくれることに対しての安心感と、何故だかとても大切にしまっておいたものを壊されてしまったような寂しさとが重なって、辛かった。(中略)セットの外に腰を下ろして、彼がいた。並んで座った。/『どう、大丈夫?』/『うん』/続けようとした言葉が途切れた。いけない、と思った時にはもう、私の瞳から涙があふれていた。あわてて取り繕おうとした私に『もう少しだからね、頑張れるかい?』/彼のやさしい声音に、私はうなずくことしかできなかった。予想していた以上に、私の中では衝撃的な出来事だった」
脱アイドルの歌を歌っていた彼女の中にある、清潔さ、純情さがかいま見える件である。しかし、山口百恵は1年後、アルバム『曼珠沙華』のジャケット撮影で、さらに一歩踏み込んだスターの性を見せるようになる。