『秋桜』は山口百恵19枚目のシングルである。この歌の最大の見所は、作詞・作曲ともさだまさしという点であろう。「花の中三トリオ」で売りだして以来の千家和也と都倉俊一・馬飼野康二・三木たかし・佐瀬寿一らのコンビから阿木耀子と宇崎竜童の横須賀ツッパリ路線にかわってから、それ以外の作家の歌をうたう初めてのケースであった。
ジャケットに掲載されている歌詞はさだの自筆になっている。さだまさしの意気込みがわかる。50万枚近いセールスを記録したヒット曲だが、それでもオリコンは第3位だった。
彼女の5度目の1位を阻んだのはまたしてもピンク・レディーである。『ウォンテッド(指名手配)』が絶好調。さらに、森村誠一の長編推理小説を映画化した「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね」のセリフが印象的なジョー山中の『人間の証明』も頑張っていた。
山口百恵は、「花の中三トリオ」の中ではレコード時代の売り上げがもっとも多く、ピンク・レディー、森進一に次ぐ第3位である。これはすばらしい記録だ。それでいて、日本レコード大賞の対象を取ったことはないし、特定の曲に限っても爆発的に売れた歌はない。
つまり、時流に乗って爆発的にヒットするわけではないが、歌によって数字がブレることもなく、手堅いヒットをコンスタントに続けたということだ。
これは、山口百恵の歌自体を支持する手堅い「基礎票」にしっかり支えられていたということだろう。彼女に根強いファンが多数いたことがうかがえる。
『秋桜』(1977.10.01)
秋桜/最後の頁
作詞者 さだまさし
作曲・編曲者 さだまさし
CBS・ソニー
同年暮れの映画は『霧の旗』。松本清張が『婦人公論』に連載し、中央公論社から刊行された長編小説の映画化である。
こちらも以前映画化されており、65年に松竹で倍賞千恵子、滝沢修、川津祐介らによって演じられている。兄の弁護人になってもらえなかった山口百恵が演じる女性がホステスになり、三浦友和演じる雑誌記者の求愛もフイにして、三国連太郎演じる弁護士に対して復讐を果たすというかなり重いストーリーである。
リメイクではあるが、モモトモ映画というコンセプトから、女性と弁護士に加え、三浦友和演じる雑誌記者の役割がより重くなっている。
いずれにしても、18歳の山口百恵が親子以上に年の離れた弁護士を籠絡するというむずかしい役を演じたことで、山口百恵の映画女優としての評価はグンと上がった。
この作品以降、ファイナル作の『古都』までは、過去に実績のあるリメイクではなく、百恵が初めて演じる作品になっている。
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- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/02/25
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