昭和映画・テレビドラマ懐古房

『イミテイション・ゴールド』を歌い『泥だらけの純情』に主演

『イミテイション・ゴールド』は、山口百恵18枚目のシングルである。お盆映画は東宝で主演作品が公開されたが、オリジナルではなく、かつて日活で作られた『泥だらけの純情』のリメイクだった。ただ、「花の中三トリオ」時代からの“手堅い”文芸路線を飛び出して、青春活写の路線に進んだことは新機軸といえた。

『イミテイション・ゴールド』は、青い性典路線が発展した歌詞になっている。「ア、ア、ア」という歌詞が今も印象深い歌だ。

以前に関係した相手と、今の相手を比べてしまうという何とも刺激的な歌である。見方によっては大変失礼な歌でもあるのだが(笑)

挑発的ながらも踏み越えた表現のなかった千家和也時代に比べて、自己嫌悪や自己批判の潔さを残しながらも、ここではすっかり大人の歌になっている。セールスも好調だった。コアなファンでなくとも今でも口ずさめる人もいるのではないか。

ただ、オリコン通年順位が『夢先案内人』(21位)を上回っている(20位)にもかかわらず1位は取れなかった。

そのときの1位は、『渚のシンドバッド』のピンク・レディーである。『スター誕生!』の後輩である彼女たちは、大型台風のようなお化けヒットを10作連続でリリースしているさなかで、またしても山口百恵は悲運に泣いた。

『イミテイション・ゴールド』(1977.07.01)


イミテイション・ゴールド/花筆文字
作詞者 阿木燿子
作曲・編曲者 宇崎竜童(編曲:萩田光雄)
CBS・ソニー

恒例のお盆映画は、山口百恵主演作品としては7本目にして文芸リメイク路線以外のものになったが、かつての日活が映画化した『泥だらけの純情』のリメイクだった。

63年に、浜田光夫と吉永小百合で作られている藤原審爾原作の同名作品である。

外交官の令嬢とチンピラヤクザの恋物語だが、もちろん令嬢は山口百恵でチンピラは三浦友和である。最後は2人とも刺されてしまう悲劇の終わり方は、文芸路線から続いているパターン。別れとは違う悲惨さは、『春琴抄』で三浦友和が、相手の目が見えないことに付き合うために自分の目を刺すシーンを思い出す。「純情」というのは、死後の解剖でヒロインが“きれいな体”だったのだ。

キャラクターの問題もあるだろうが、どうして山口百恵というとそういうストーリーばかりなのだろうという気もする。

2年前の『花の高2トリオ・初恋時代』のような、にっこり笑った山口百恵もたまにはいいのではないかと思う。

歌の方は、一足先に青い性典路線から一歩進んで横須賀ツッパリ路線にシフトしたが、映画の方も定番の文芸路線で手堅く作っていたところから一歩踏みだし、日活のちょっとあらっぽい青春路線によって、脱アイドルを試みる百恵の女優像を見ることが出来る。

山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)

  • 作者: 中川 右介
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/05/08
  • メディア: 文庫

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