昭和映画・テレビドラマ懐古房

『もう戻れない』を歌い『愛情の設計』に主演した桜田淳子

『もう戻れない』は桜田淳子20枚目のシングルである。森昌子が叙情ソングから本格演歌へ、山口百恵が青い性典から横須賀ツッパリ娘に路線を発展させていったように、桜田淳子も大人への路線変更を迫られていた。その意味で、今回の『もう戻れない』は大人へのイメチェンを試みた恋うたである。

ジャケットに映る桜田淳子は、ここのところ続いていたミディアムではなくショートカットである。これもまた、大人への変身を試みる彼女のまぶしい笑顔に似合ったヘアスタイルである。

作詞はいつものように阿久悠、作曲は筒美京平。このコンビは、第13回日本レコード大賞・大賞と第2回日本歌謡大賞・大賞のブル受賞に輝いた尾崎紀世彦の『また逢う日まで』が印象深い黄金コンビである。

船山基紀は、『あなたのすべて』(1977.2.25)、『気まぐれヴィーナス』(1977.5.15)、『しあわせ芝居』(1977.11.5)、『追いかけてヨコハマ』(1978.2.25)、『20才になれば』(1978.9.5)、『美しい夏』(1980.4.21) など、後期の桜田淳子の歌に関わっている。

『もう戻れない』(1977.9.5)


もう戻れない/ロンリーガール
作詞者 阿久悠
作曲・編曲者 筒美京平(編曲:船山基紀)
ビクター音楽産業

ゴールデンウィーク映画は東宝に出演したが、お盆は恒例の松竹映画に戻った。『愛情の設計』に主演。里中満智子の同名のマンガが原作である。

心臓弁膜症の少女が病院の御曹司と知り合い、残りの短い生涯を御曹司と共に生きる話だ。桜田淳子は翌78年のゴールデンウィークにも『愛の嵐の中で』に主演している。だが、それ以降がないので「愛」シリーズにならなかったのは残念である。

相手役は佐藤祐介。70年代の桜田淳子の出演作品では必ず出てくるが、山口百恵と桜田友和のようにコンビそれ自体が注目されることはなかった。

理由のひとつは、佐藤祐介が桜田淳子と同じサン・ミュージックの出身のため、桜田淳子の出演を条件とする抱き合わせ出演のようなイメージがあったこと。

また、彼は他の作品で原田美枝子や秋吉久美子など他の女優の相手役もつとめていたので、“淳子専属”ではなかったこと。

何より、同じような薄幸ストーリーでも、リアルな出自が重なる山口百恵の場合、それを支える相手役にも感情移入してしまうのに比べ、桜田淳子の場合は相手役にさほどの重きを置かずに見られていたことなどがあるだろう。

三浦友和はその間、自身も役者として木偶の坊の美青年からしっかりとした演技ができるまでに成長していったが、佐藤祐介は美少年以上の何かを表現することがついにできなかった。

夢を食った男たち―「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代 (文春文庫)

  • 作者: 阿久 悠
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/12/06
  • メディア: 文庫

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