『春の岬』は正統派演歌の一曲

『春の岬』は森昌子25枚目のシングルである。「花の中三トリオ」は「高三トリオ」で卒業。一つ前のリリースである『なみだの桟橋』からいよいよ演歌歌手への路線に進んだ森昌子だが、この歌はまさに正統派演歌の一曲である。この年齢で本格演歌を歌う彼女について、ファンのこだわりにも深いものがあったようだ。

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本格演歌となれば、愛を歌い恋を歌いせつなさを歌う大人の世界である。

ただ、『春の岬』では、風邪を引いた「私」に対して相手が「ぼくにうつせと 唇よせる」という歌詞があるが、決して唇は重ねない。

森昌子の一連の歌には、「優等生すぎて、ある程度までは情感をこめ、きっちり歌うけれども、それを一歩踏み抜けて、破格に近い訴えがない」(『昭和流行歌スキャンダル』)というシビアな論評もある。後にこの曲はCD『森昌子 シングル・コレクション51』に収録された。

杉紀彦は、森昌子については『なみだの桟橋』(1977.8.1)、『ためいき橋』(1979.10.21)、『越冬つばめ』(1983.8.21)など、彼女の本格演歌路線の主要作家となったことは前に述べたとおりだ。内山田洋とクール・ファイブの『おんなの愛はブルース』、北原ミレイの『夢うた』、清水由貴子の『いつか秋』、菅原洋一・シルヴィアの『アマン』などを手がけている。

竜崎孝路は、『春のめざめ』と『恋待草』(1975.3.1)、『なみだの桟橋』(1977.8.1)のB面の『秋の約束』、『越冬つばめ』と『紅花になりたい』(1983.8.21)、『ありがとう』と『雁来紅』(1986.8.21)など、やはり森昌子の演歌路線に多くの編曲を行っている。

『春の岬』(1977.12.1)

春の岬
春の岬/波かげ
作詞者 A面:杉紀彦 B面:いまむられいこ
作曲・編曲者 A面:市川昭介(編曲:竜崎孝路) B面:新井利昌(編曲:高田弘)
ミノルフォン

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歌と直接関係ないが、安部譲二によるとこの頃、「塀の中」では、雑居房の囚人9人全員が、森昌子の熱狂的なファンと、「なーんだ、あんな鼻の広がった女給みたいなの」というアンチとに分かれ、殴り合いのケンカをしたというエピソード(森昌子乱闘事件)も語られている(『ぼくのムショ修業』)。

アンチというのはツンデレ人気と見ていい。

罪を犯して懲役を打たれた崖っぷち男たちが、場所をわきまないケンカのテーマになる。森昌子の存在感は、成人した大人の間でもこの頃それだけ大きかったということだろう。

いずれにしても、森昌子の存在感は、肯定派か否定派か、はっきりしていたということだ。スタ誕三人娘の中では、演歌を歌うことで歌の面では地味なイメージをもたれがちだが、地味なものに対するファンのこだわりは重い。

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