昭和映画・テレビドラマ懐古房

『少年時代』を編曲した小六禮次郎は青春ドラマでブレイク!

『少年時代』は森昌子19枚目のシングル。井上陽水に同じタイトルの歌があるが、もとろん競作でもカヴァーでもない。森昌子ならではの抒情歌である。ネットでは、映像が少ないと言われている。それだけにファンでも馴染みが薄いかもしれないが、森昌子が「ぼく」の立場になって独白している歌である。

「花の中三トリオ」はひれびれの個性・路線に合わせた様々な歌を歌っているが、歌詞では一人称が「ぼく」、つまりタイトル通り少年の歌を歌ったのは森昌子だけである。野良犬に邪険に出来ない、人の心の痛みに理解を示し、いつも志をもった「ぼく」が、「かあさん」に訴えている詞である。

森昌子は後に、「お兄さんのような人と結婚したい」という気持ちから、一世代年上の森進一と結婚した。おそらくは、「ぼく」のようなお兄さんがいればいい、という思いを込めてこの歌を歌ったのではないだろうか。

森昌子は、山口百恵と違い、両親健在で都内の公立中学に通った普通の家庭の子弟というイメージが強いが、一人っ子ならではの寂しさや切なさを歌うことが多い。

一人っ子などこの世の中にたくさんいると思われるかもしれないが、兄妹のいるものにはわからない様々な心模様を森昌子は歌っているのだ。

B面の『にほんの詩』は、私たちの四季折々の暮らしにありがちな日常的風景や人々の営みを綴った詞である。

テレビでは春の甲子園選抜大会が中継され、同級生が負けて泣いているお馴染みの光景がある。

そんな季節に私は花を生けている。夕立の季節は夏祭りに賑わい、普段は信仰のない若者までおみくじをひいている。

そんな季節に私は下駄を履いている。紅葉の季節は観光客で賑わい、そんな季節に私は木の実を買っている。

お正月には雪が舞い、いつもの音楽ではなく琴の音が聞こえてくる。そんな季節に私は松を立てる。古きよき日本の風景である。

『少年時代』(1976.9.1)


少年時代/にほんの詩
作詞者 阿久悠
作曲・編曲者 遠藤実(編曲:小六禮次郎)
ミノルフォン

編曲の小六禮次郎は、すぎやまこういち門下生である。しかし、森昌子のこの頃の歌を聴いたものとしては、それよりも何よりも、青春学園ドラマの作曲で有名である。

70年代後半は『青春ド真中!』や『ゆうひが丘の総理大臣』といった青春ドラマの音楽を手がけ、後にNHK大河ドラマの『秀吉』『功名が辻』なども担当するなど、幅広いジャンルで活躍している。

60年代のいずみたくともまた違った、繊細で心が洗われるような曲の数々はいまだにサウンドトラックDVDとして売れている。

むしろ、青春学園ドラマの小六禮次郎が「花の中三トリオ」の歌にも関わっていたのか、という印象が強いのではないだろうか。

女優の倍賞千恵子と結婚したことでも話題になった。やはり70年代を、生きたものとしては、あの、『男はつらいよ』のさくらと結婚したのか、という思いが強いだろう。

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