昭和映画・テレビドラマ懐古房

『夕笛の丘』を歌い『どんぐりっ子』に主演した森昌子

『夕笛の丘』は、森昌子17枚目のシングルである。いつもの阿久悠ではなく、『あの人の船行っちゃった』の山口あかりがA面、『能登の海』の及川恒平がB面の作詞を提供している。作曲も遠藤実ではなく、『お兄さんみたいな人』の新井利昌がA面、『若草の季節』の高田弘がB面を担当している。まあいずれにしても、過去に実績のある「森昌子組」のメンバーである。

『夕笛』といえば、舟木一夫の歌のタイトルにも使われた。デビュー三部作で青春歌謡、「花の中三トリオ」として売りだされてから徐々に抒情歌、演歌の入り口と少しずつ大人の歌へと進めてきたが、ホリ・プロ総帥の堀威夫氏にとっての森昌子プロデュースは、この時期にも舟木一夫が意識されているのだろうか。

『夕笛の丘』(1976.6.1)

夕笛の丘/北の夏
作詞者 A面:山口あかり B面:及川恒平
作曲・編曲者 A面:新井利昌(編曲:小杉仁三) B面:高田弘(編曲も)
ミノルフォン

森昌子はこの時期(1976年7月)、山口百恵の『風立ちぬ』との同時上映で東宝映画『どんぐりっ子』に映画初主演をしている。前年は共演したが、この年は「花の中三トリオ」が「高2トリオ」になって、いよいよ映画が同じ会社から併映されることになったのだ。

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これは、山形の山村から上京して東京の住宅地で住み込みのお手伝いとして働く女性と、ひねくれた次男の心の交流を描いた物語。由起しげ子が書いた児童書『女中っ子』が原作である。

55年に左幸子が演じた日活映画『女中っ子』が公開されているが、左幸子版は秋田県出身という設定で、森昌子版は原作に忠実な山形県出身の設定になっている。ただ、「女中」という言葉は今は使わないのでタイトルは変わっている。

「どんぐり」というのは、彼女のキャラクターを肯定的に明るくとらえたものであり、作品の質として悪くはなかったと思われる。

しかし、両親揃って東京に住む普通の家庭の子弟である森昌子では、田舎から出てきて住み込みの女中奉公という設定が、山口百恵のように出自やキャラクターと配役を重ねることができず、また山口百恵の映画のようなモモトモという話題性もなかった。

結局、森昌子映画待望論は起こらなかったのか、以後、彼女主演の映画は山口百恵のように第2弾、第3弾は作られなかった。

森昌子は78年にも『おはなちゃん繁昌記』という主演ドラマを経験するが、これも江戸時代の話で1クール打ち切りになった。

桜田淳子のように、当初からドラマや映画の経験を積んでもおらず、山口百恵のように文芸リメイクや「赤い」シリーズのような持ち場もない森昌子のアイドル時代は、ドラマや映画で実績を残す機会に恵まれなかった。

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