『愛に走って』は山口百恵12枚目のシングルである。B面の『赤い運命』は、タイトルで分かるようにおなじみ金曜21時の大映ドラマ「赤いシリーズ」のひとつ『赤い運命』の主題歌である。大映テレビの「赤いシリーズ」
10作品製作。「花の中三トリオ」時代にその前の『顔で笑って』に出演した山口百恵はシリーズに7本に出演した。『赤い運命』は3本目の出演作である。
『愛に走って』は、リリースされてすぐにオリコンベストテンに初登場しながら、またしても2位で止まってしまった。
このときの1位は、ダニエル・ブーンの『ビューティフル・サンデー』である。これもまた“お化け”だった。国内で200万枚、全世界での売り上げ100万枚超えを記録した。これは日本における外国人アーティストのシングル盤新記録である。
今も覚えていて口ずさめる人はたくさんいるのではないだろうか。
発売時期が1ヶ月でもずれていればよかったが、同年3月10日に発売されたため、この歌とほとんど時期がかぶってしまった。
ヒットしても、いつもナンバー2、ナンバー3に留まってしまう彼女の不運は、まさに「何か心の奥底に深く抑圧されたものの所在を暗示」(『女優山口百恵』)という評価を象徴しているように感じられた。
『愛に走って/赤い運命』(1976.03.21)
愛に走って/赤い運命
作詞者 千家和也
作曲者 三木たかし
編曲者 A面:萩田光雄 B面:高田弘
CBS・ソニー
B面が主題歌になった『赤い運命』は「赤い」シリーズの第3弾。出産したばかりの夫人や娘と伊勢湾台風で別れ別れになった東京地検検事(宇津井健)が、養護施設の赤ん坊取り違えによって、引き取った「我が子」が元殺人犯(三国連太郎)の娘と入れ替わってしまった。そこからいろいろな出来事が展開するストーリーである。
山口百恵と宇津井健は、今度は実の父娘ながら取り違えられた関係になった。
相手役は三浦友和から南條豊にチェンジ。相変わらず山口百恵は多忙で代役などの撮影もあったために、彼女のスケジュールに合わせることができなかった八千草薫が降板するハプニングもあった。
山口百恵は、その非礼を詫びることもできない自分から、歌手という存在の小ささを感じた。
それが「女優になりたい」という気持ちを抱くひとつの理由になったという(『蒼い時』)。
山口百恵自身はこの作品で、『第9回テレビ大賞優秀個人賞』を受賞した。
平均視聴率は25.6%。05年にホリプロ45周年・TBSテレビ放送50周年記念作品と銘打った『赤い運命2005』としてリメイクされている。