昭和映画・テレビドラマ懐古房

『ゆれてる私』を歌い『男はつらいよ』に出演した桜田淳子

『ゆれてる私』は桜田淳子にとって13枚目のシングルになる。約30万枚を売り上げ、オリコンは5位に到達した。ジャケットを見ると、ひと頃に比べて髪が長くなっていることに気づく。少女から女性になりつつある少し伸ばした髪もよく似合う。

作詞はいつものような阿久悠で、作曲は森田公一。中村泰士は彼女の初期のキャラクターに貢献した曲作りを行ったが、この頃の女性は1年1年で変わっていく。作曲家がかわったことで、桜田淳子はデビュー時から一歩進んで次のステージに進んだわけだ。

『ゆれてる私』(1975.11.25)

ゆれてる私/あなたが恋しい
作詞者阿久悠
作曲・編曲者 森田公一(編曲:竜崎孝路)
ビクター音楽産業

75年暮れの封切り映画は『男はつらいよ・葛飾立志篇』。桜田淳子にとっては松竹4本目の出演になる。


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デビュー曲が不振で歌唱力もさほどではなかった山口百恵は、彼女主演の映画を作ることでポピラリティを獲得しようというホリ・プロの方針があった。

一方サン・ミュージックは、初年度にレコード大賞の最優秀新人賞を取り、アイドルとして好スタートをきった桜田淳子に対して、アイドルプロモーションの王道を歩ませた。

主演なら青春学園映画だったり、『男はつらいよ』のような看板映画(しかもこの時点ですでに国民的映画)の華を演じさせたりと出演する作品に幅を持たせたのだ。

ストーリーの方は、寅次郎が17年前に恋した女性・お雪の娘役。寅次郎は毎年その女性の送金していたので、娘は寅次郎を本当の父親と勘違いして、母親が亡くなるとズンコ、もとい桜田淳子演じる最上順子が「とらや」に訪ねてきたという設定だ。

桜田淳子の出身に近い山形県寒河江から上京したことになっている。

お雪は無学だったから、男に騙されて順子を産み、男に捨てられたという話を住職から聞いた寅次郎が、学問をおさめなければならないと謙虚になってとら屋に帰ってくる。その際、御前様の姪であり考古学の研究者であるマドンナ・筧礼子(樫山文枝)に好意を寄せる展開である。

ストーリーがあって、それに合った配役が桜田淳子だったのか、桜田淳子の出番を作るためのストーリーだったのかは分からないが、いずれにしても、お雪が健在だとヒロインがかぶるが、娘だけが残って訪ねてくる設定で収まりがよくなっている。

とら屋ではいつものように、「お前がまともに結婚していたらこの位の娘がいるのになあ」と愚痴るおいちゃんの言葉をきっかけに一家はケンカ。

寅次郎はまた家を飛び出して旅に出ることで桜田淳子の出番は終わるが、国民的映画に出演したことで、桜田淳子が松竹の期待の女優として扱われていることが分かる。

山口百恵が東宝文芸路線なら、桜田淳子は松竹で青春映画や国民的映画に出演。この棲み分けとライバル意識は興味深い。

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