昭和映画・テレビドラマ懐古房

『ささやかな欲望』で「青い性」路線から事実上卒業した山口百恵

『ささやかな欲望』は、山口百恵10枚目のシングルである。B面の『ありがとう あなた』は、TBS系ドラマ『赤い疑惑』の主題歌。オリコン5位、レコードセールスは30万枚を売り上げた。これが都倉俊一最後の提供曲となった。

この時点で山口百恵はまだ高校2年生だが、「青い性」路線を標榜した生徒アイドルとしての山口百恵は、ここで一区切りである。

『ささやかな欲望』(1975.09.21)


ささやかな欲望/ありがとう あなた
作詞者 千家和也
作曲・編曲者 都倉俊一(編曲:馬飼野康二)
CBS・ソニー

10月の改変期には、金曜21時の大映ドラマ枠で新番組『赤い疑惑』が始まった。

これまでの『顔で笑って』(1973年)『赤い迷路』(1974年)は、宇津井健の娘役で添え物的な感もあったが、『赤い疑惑』は同じ娘役でも、ヒロインといえるより重要な役どころになった。

そして今回も設定は「訳あり」である。宇津井健とは本当の父娘ではなく、岸恵子演じる叔母が実の母親だった。父親の勤務する大学で爆発事故があり、放射線療法用コバルト60からの放射線に大量被曝。

その時、山口百恵を助けた医大生が三浦友和で、後に惹かれ合うことになるが、実は山口百恵の異母兄妹だったという話だ。

TBSには「百恵チャンを殺さないで」という投書が4000通も殺到した。

売れっ子の山口百恵は、自分のシーンを3時間でまとめ撮りして歌番組に駆けつけ、宇津井健が収録の合間にテレビを見ていたら、山口百恵が生番組で歌っているのでビックリしたというエピソードもある。

平均視聴率23.4%、最高30.9%(関東地区)を記録した。

いささかマンガチックながらも、不幸な出自を劇的に生き抜く彼女が、「青い性」を売り物にしたキャラクターとは違う、もうひとつの新たな売り出し方を得た点で、この大映ドラマのシリーズは意義深い。

都倉俊一が「青い性」の作曲を降りたことと時期が重なることを考えると、この時期は彼女にとってひとつの転換期だったといえるかもしれない。

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