『湖の決心』は山口百恵8枚目のシングル。前回の『冬の色』は、東宝映画『伊豆の踊子』主題歌になったこともあってオリコン1位を獲得したが、その勢いの反動というべきか、いささかインパクトが足りなかったのか、今回は週間5位止まりだった(年間44位)。
といっても、考えようによっては、大ヒットの次はその反動が来て当然なのに、それでも「5位」なのだから 、「花の中三トリオ」「スタ誕三人娘」の中では最後発だった山口百恵も、ここにきて完全にトップ歌手の仲間入りを果たしたともいえる。
『湖の決心』(1975.03.21)
湖の決心/春の奇蹟
作詞者 千家和也
作曲・編曲者 都倉俊一(編曲:森岡賢一郎)
CBS・ソニー
リリースの翌月には、東宝映画文芸リメイク路線の第2弾として『潮騒』が封切られた。三島由紀夫の同名小説を原作とした4度目の映画化である。ホリプロダクション創立15周年記念作品とも銘打たれている。
山口百恵が海女の格好をしたスチール写真が話題になった。監督は『伊豆の踊子』に続いて西河克己。山口百恵主演で7本の文芸映画を撮っている。
もちろん、今回もこれもモモトモ共演作品だ。本来なら結ばれない漁師と海女が、いろいろな出来事を通して幸せな方向にいく話である。
共演者は、『顔で笑って』で共演した初井言栄。もうすでに東宝は専属契約制をやめていたが東宝映画には欠かせない名バイプレーヤーの有島一郎。テレビ時代劇『大江戸捜査網』などで活躍した中村竹弥。三浦友和にとっては『シークレット部隊』以来の長い付き合いとなる川口厚、ナレーターには石坂浩二など、ユニークな顔ぶれが揃った。
71年に森谷司郎監督、朝比奈逸人・小野里みどり主演で作られたときは、海女が小さく硬い乳房を見せる、つまり上半身ヌードになるシーンがあった。
そこで『伊豆の踊子』の風呂場で手を振るシーン同様に、山口百恵の「ヌード」が期待され、映画の中では2人が裸で抱擁するスチール写真もあったが、ここでも山口百恵は脱いでいない。
彼女の『蒼い時』によれば、「『ふりむけば 愛』という映画の中で初めて上半身のみ、何も纏わずに撮影」したという。それでも、2人が唇を重ねるシーンはあり、当時としては人気上昇中のアイドル歌手のキスシーンとして大きな話題になった。
ちなみに、同時上映は『お姐ちゃんお手やわらかに』。タイトルで想像つくと思うが主役は和田アキ子。ホリ企画作品で、あのクレージー映画を数多く撮った坪島孝監督作品である。山口百恵もちょい役(本人役)で出演している。