『冬の色』は、山口百恵にとって7枚目のシングルである。デビュー曲が「花の中三トリオ」「スタ誕三人娘」である森昌子、桜田淳子に後れを取り、2曲目から「青い性」路線でじりじりとセールスを挙げていった山口百恵が、初めてオリコン1位を獲得したのがこの歌である。
トップに立ったのはリリースされて2週目の快挙だった。従来とは異なるバラード調だったが、初動の勢いは彼女の歌手としてのブランディングがこの時点で確立していたことを示している。山口百恵は「花の中三トリオ」→「高一トリオ」の中で一歩出遅れていたが、三人の中で初めてオリコン1位をとったこの歌の実績によって、いよいよ対等の立場に立ったといえるだろう。
当時、ニッポン放送で土曜夜24時20分から放送していた『山口百恵のラブリーポエム』において、よくこの曲が流れていたのを記憶している。
『冬の色』(1974.12.10)
冬の色/伊豆の踊子
作詞者 千家和也
作曲・編曲者 A面:都倉俊一(編曲:馬飼野康二) B面:馬飼野康二(編曲:高田弘)
CBS・ソニー
東宝映画『伊豆の踊子』主題歌(B面)
一方、B面は山口百恵が初めて主演した『伊豆の踊子』(東宝)の主題歌である。
ホリプロの総帥・堀威夫によると、まだこの当時の山口百恵では、「一本立ちの映画企画は成立し難い」(『いつまでも青春』)状態だった。
そこでホリ・プロタレント総出演との二本立てで企画を持ち込んだが、それでも松竹は難色を示した。
ところが、当時の東宝・松岡功営業本部長は即決でOKを出してくれたという。
しかも、同社の正月映画『エスパイ』の併映作が事情で飛んでしまったため、『伊豆の踊子』が正月映画に繰り込まれることになった。
正月映画といえば各社とも大作を用意する場だ。堀威夫としても山口百恵としても望外の機会を獲得したことになる。
同作は、すでに多くの女優によって映画化されているが、もっとも原作に忠実な脚本が用意された。
そこで演じられた山口百恵の踊り子像は、彼女の「心の奥底に深く抑圧された」ものを感じさせる不幸を当たり前のように受け入れるキャラクターだった。
封切り前には、踊り子が書生をみつけて裸のままで無邪気に手を振る場面で彼女がヌードになるかどうかが話題になった。
少し考えれば、どうにでも都合がつくそのようなシーンで簡単に裸になるはずがないのだが、当時のアイドルに対する好奇心としては妥当な「疑問」だったのかもしれない。
書生役は三浦友和が起用された。彼女の主演映画における文芸リメイクとモモトモ共演という2つの路線はここから始まっている。
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