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『続サラリーマン忠臣蔵』はサイコーの忘年作品

『続サラリーマン忠臣蔵』。17日に発売された『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.19』(講談社)に収録されている。1961年の映画である。1ヶ月前の『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.17』(講談社)には『サラリーマン忠臣蔵』が収録されていた。その続編であるが、正編以上に力の入る力作である。

収録されたDVDの中でナビゲーターの小松政夫はこう解説している。

「クライマックスでは、金語楼がそば屋の店主として登場いたします。さあ、このそば屋で社員たちが決起するシーンは、これは圧巻ですねえ。思わずハラハラします。ドキドキします。ああ~、涙もはらはら出ます」

全く同感である。

『東宝昭和の爆笑喜劇DVDマガジンVol.17』の「正編」でもそうだったが、小松政夫は東宝クレージー映画を語る時とはうって変わって、力を込めた解説をしている。

それだけ、スタア勢揃いのシリアスなストーリー。大作なのである。

東宝社長シリーズは、同じ登場人物と設定で正編、続編が作られる。今回はタイトルが「社長」ではなく「サラリーマン」であるが、やはりその方法を踏襲している。

ただ、今回はシリーズ初めて、というか最初で最後だが、冒頭で森繁久彌が正編(前編)のあらすじを語っている。他の『社長シリーズ』には見られない構成である。それだけ前作とのつながりが重要な、つまり前作と合わせてひとつの作品なのである。

ということで、正編のストーリーをおさらいしよう。

赤穂産業の二代目社長・池部良演じる浅野卓巳が、丸菱銀行頭取・東野英治郎演じる吉良剛之介に侮辱され吉良を殴ってしまう。

浅野は失意のまま事故死。しかも、社長に乗り込んできたのはよりによって吉良だった。

赤穂産業専務・森繁久彌演じる大石良雄は、吉良と、吉良にいちはやく擦り寄った有島一郎演じる大野久兵衛常務らによって、自分の人脈の中間管理職をみな左遷させられた。

そして、息子・力(夏木陽介)の縁談も潰され、さらに先代社長の念願だったフランスアーマン商会との契約も却下されたことで、独立の腹をきめた。

大石は、先代社長が懇意にしていた若狭金属社長の桃井和雄(三船敏郎)に支援をお願いし、フランスアーマン商会に、契約者を大石個人に切り替えることを依頼。

了解を取ると、吉良新社長歓迎会の席で、赤穂浪士四十七士の剣舞を吉良に見せつけ刀を突きつけた上で、小野寺十三郎営業部長(加東大介)、寺岡平太郎専務付き運転手(小林桂樹)らの辞表をとりまとめて吉良の膳の上に叩きつける。

「新会社を設立します」という大石の啖呵に、「君らごときに何ができる」と言い捨てる吉良。

「それは見てからのお楽しみだ」と言い返した大石は、小野寺ら、そして先代社長と恋仲であった芸者加代次(新珠三千代)と宴会の部屋を勇ましく出て行く。

ここまでが正編である。引き続き続編を見ていこう。

四十七士の討ち入りは株式総会

大石が貸ビルで発足した大石商事。赤穂産業から同志の社員が続々と参加し46人となった。

そして、料亭あづまにおける設立祝賀会で、店の仲居をしていた元赤穂産業エレベーターガールの堀部安子(中島そのみ)があらわれ、「私も入れてくださらない」と願い出たので社長付き運転手として採用。47人によるスタートとなった。

しかし、肝心の営業はうまく進まない。フランスアーマン商会の特許を化学工業系の会社に売り込んでいるが、吉良がストップをかけていたのだ。

苦しい時は悪いことが重なる。社長秘書となった寺岡の妹であり、大石の秘書だった軽子は、先代社長秘書で吉良とそりが合わずに辞表を叩きつけて故郷に帰った早野寛平(宝田明)と所帯を持っていた。

そこへ、かねてから軽子を狙っていた大野の息子・定五郎(三橋達也)がハンティング帰りに偶然訪ねてくる。早野が仕事から帰ってくると、定五郎が軽子を手篭めにしようとしていたところだった。

早野と定五郎はもみ合っているうち、誤って定五郎の銃の引き金を引いてしまったため、殺人未遂で逮捕。勾留されてしまった。

大石商事の方は、専務になった小野寺がとっかかりを作った天野化学。だが、大石が利用している一文字才子(草笛光子)のクラブでは、肥後豊常務(南道郎)が吉良の秘書である伴内耕一(山茶花究)と酒を飲んでいた。肥後は板内に買収されていたのだ。

しかも、そのお店には勾留されている早野を釈放させるべく、軽子が上京してホステスとして働いていたので大石はびっくり。

しかも、才子に助平心を抱いている大石が才子のアパートに行くと、軽子が一緒に住んでいたのでまたびっくり。さすが社長シリースせ。「お約束」だった浮気のし損ねのズッコケシーンである。

力は、大野の娘の・小奈美(団令子)と交際を続けていたが、結局小奈美は父親の勧める見合いをすると言い出し、絶交を申し渡す。

が、力の気持ちは晴れず、毎晩酒を煽っていた。

資金繰りに困窮した大石は、いったんは桃井に再度支援を求めに行くが、大石商事が実績の上がらないことに苛立っている桃井を前に、結局打ち明けることができなかった。

大石は結局、妻・律子(久慈あさみ)を実家に帰し、力を独立させて自宅を処分。寺岡のアパートに転がり込む。

一方、寺岡は、軽子に肥後の言うことを聞くよう頼むが、もちろん軽子は夫ある身だから聞き入れるわけにはいかない。

軽子はそのことを才子に相談し、才子は寺岡に確認しようとアパートを訪ねる。

大石は軽子の話を、「女をとりもって商売しようとはゆめゆめ思っとらんぞ」と激怒。しかし、一方でひたむきに会社を心配する寺岡に心ひかれ、結婚を決めた才子の気持ちも知り、がっかりする。

大石は最後の手段として、天野化学社長・天野義平(左卜全)にじか談判した。そこで、肥後が独断で商談を取りついでいなかったことを知る。天野は即座に契約を取りかわした。

それによって大石商事の株は急上昇。大石は山鹿之行(河津清三郎)だけには本心を打ち明けた。会社の利益をすべてつぎ込んで赤穂産業株を買占めることを。

しかし、そのことは吉良に知られないように進めるために誰にも言えなかった。芸者加代次に誤解されても……。

そして、雪の降る12月14日。大石は社員一同をそばや「山科」に集合させ、ボーナスを赤穂産業株で支払うことを告げた。大石商事の社員全員が株主として赤穂産業の株主総会にのりこみ、吉良社長の退陣を迫る計画である。

株主総会は大荒れとなったが、最後に寺岡が才子の持ち株1万株の委任状を出して退陣に追い込んだ。

吉良は、自分が取り持った縁談を小奈美が土壇場でキャンセルしたことや、有力な営業社員がなどごっそり抜けて弱体化した会社など心労から、退陣が決まった瞬間、崩れ落ちるように倒れた。

大石商事は赤穂産業と合併。大石商事に支援を行った桃井が社長に就き、大石は専務に返り咲いた。

ラストはミフネと森繁のツーショット

もちろん東宝の映画だから、ハッピーエンドにはなるんだろうと思ったが、それでもいろいろな苦労をエピソードに挟んだことで、十分感情移入できた。

だが、シリアスなストーリーであるのに、随所にコミカルなところがあるので重くならない。

冒頭の小松政夫のナビゲーションにあるように、笑ったり、ハラハラしたり、胸いっぱいになったり。50年以上前の映画なのに、今も人の心に通用する普遍的な面白さがあるのだろう。

どの出演者も存分に自分の味を出しているのだが、印象に残ったのは中島そのみ。正編エレベーターガールのときのルックスがキンタロー。のように見えたのだが、続編では運転手としてグッと輝きを増している。なるほど、お姐ちゃんシリーズで一世を風靡しているさなかだけのことはあると思った。

東宝黄金時代のファンなら、ラストの三船敏郎、森繁久彌のツーショットだけでもこの作品に価値を感じるはずだ。

論より証拠。とにかくご覧になることをお勧めしたい。来年は頑張るぞ、という気持ちになれる最高の年末“年忘れ作品”である。

東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン 2013年 12/31号 [分冊百科]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/17
  • メディア: 雑誌

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