『ひと夏の経験』で山口百恵は初期のスタイルを確立した

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『ひと夏の経験』は、山口百恵通算5枚目のシングルである。「あなたが望むなら 私何をされてもいいわ」という大胆な歌詞の『青い果実』(73年9月1日)はベストテン入り(9位)したが、作詞者の千家和也はこの歌でさらに踏み込み、「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」と歌わせた。いよいよ「青い性」路線全面展開である。

『ひと夏の経験』(1974.6.1)

ひと夏の経験

ひと夏の経験/太陽の友達
作詞者:千家和也 
作曲・編曲者:都倉俊一(編曲:馬飼野康二)
バップ

山口百恵が、「性的に未成熟でありながらも強い好奇心を持ち、男性を性的に挑発してやまない」(『女優山口百恵』)。それが、いわゆる「青い性」路線といわれるものである。それを全面開花させたのがこの歌といっていい。

「スタ誕三人娘」「花の中三トリオ」として売りだされた森昌子、桜田淳子とともに、いよいよ山口百恵も自分の路線を確立したわけだ。

オリコンはこれまでで最高の第3位につけた。レコードの売り上げは75万枚。かつて、菅原洋一が『今日でお別れ』でレコード大賞を取った時のセールスが66万枚。大賞クラスの売上ということである。

暮れの表彰では、「第16回日本レコード大賞・大衆賞」「第5回日本歌謡大賞・放送音楽賞」「第7回日本有線大賞・大衆賞」などを受賞した。

大衆賞というものの位置づけがよくわからないのだが、ピンクレディも沢田研二とレコード大賞を激しく争った77年、最終的に沢田研二の『勝手にしやがれ』が大賞を受賞。ピンク・レディーの『ウォンテッド(指名手配)』は大衆賞だった。

ということは、準大賞という見方もできる。

ジャケットを見ると、『青い果実』のジャケットでは微笑んでいた百恵が、ここでは大人の表情を見せている。

ただ、「大切なものをあげる」「愛は尊いわ」など、歌詞には少女の「未成熟」らしい純潔さが表現されており、アイドル歌手としてのギリギリの立ち位置が配慮されている。

ジャケットを撮影したのは篠山紀信である。篠山は百恵が引退する直前の80年7月に、CBSソニーから『山口百恵 激写/篠山紀信』というタイトルの映像作品をリリースしている。

山口百恵にとって、篠山紀信は信頼できる人間だったようだ。

山口百恵は16枚目のスタジオ・アルバム『曼珠沙華』において、篠山紀信が撮影したジャケット写真でバストトップを撮影している。 

いわゆるお色気を売りにしているわけでもないのに、レコードジャケットでそこまでする必要があるのか、という気もするが、篠山紀信にならそこまで許そうという信頼があったのだろう。

さらに、三浦友和との結婚についても、山口百恵は酒井政利と篠山紀信にまず打ち明けている。

女優山口百恵

女優山口百恵

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ワイズ出版
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本

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