昭和映画・テレビドラマ懐古房

花の中三トリオを振り返る

花の中三トリオ。スタ誕三人娘ともいわれた。森昌子、桜田淳子、山口百恵のことである。今から40年前、日曜日午前11時から放送されていた日本テレビ系のオーディション番組『スター誕生!』で生まれた3人組である。同番組からは現在も活躍する多くのタレントが芸能界デビューを果たしたが、その先駆者でありかつ象徴といえるのがこの花の中三トリオなのである。

『スター誕生!』という番組とはいかなるものだったのかについても振り返っておこう。

その昔、芸能界には“ナベプロ帝国”という言葉があった。タレントを何百人も抱え、メディアやレコード会社を牛耳っていた渡辺プロダクションの力を表現したものだ。政財界にも強力なコネクションを持つとされ、批判はタブー視された。

その巨大オフィスのナベプロがあるとき、日本テレビの人気歌番組『NTV紅白歌のベストテン』に対抗して、同じ曜日と時間帯にNETテレビ(現・テレビ朝日)の『スター・オン・ステージあなたならOK』という競合番組をぶつけてきた。しかもナベプロ側は、「(紅白歌のベストテンの)放送時間をずらさないのなら、うちのタレントは出演させない』とまで通告。売れっ子タレントを抱えるプロダクションの強引さは今も昔も変わらない。

ただ、当時の同局が今のメディアと違うのは、それに屈せず、ではこちらでタレントを作りましょう、という発想を持ったことだ。そんな経緯からスタートしたタレントスカウト番組が、あの『スター誕生!』である。

当初は「ノド自慢」感覚で参加する素人に番組関係者はヘキエキしたが、タイトル通りに番組から次々スターが誕生することで、たんなる番組の成功に留まらず、プロダクションとレコード会社、もしくはプロダクション同士の力関係など、芸能界の秩序や価値観が根底から大きく変化したといわれる。

そうした新しい時代を切り開くきっかけになった同番組を支えたのが、番組出身のスターたちだ。中でも初期にデビューした森昌子、桜田淳子、山口百恵は、番組の果たした“業界クーデター”を象徴するすさまじいパワーと個性的な活躍を見せた。今回はその「スタ誕三人娘」の残したヒットソングについて、ジャケットともに振り返ってみよう。

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