『ハワイの若大将』(1963年、福田純監督)は、若大将シリーズの4作目である。本来なら、前作の『日本一の若大将』でストーリー上は一区切りついたはずだが、興行成績がいいので、4作目以降も作られることになった。(画像は劇中より)
主人公の若大将(加山雄三)は、今回も悪気を知らないお坊ちゃん京南大学の学生で、今回のスポーツはヨットである。
若大将シリーズの4作目以降は、観光映画としての側面もあったが、タイトルどおり、今回は若大将がハワイに飛んでいる。
3人のヒロインは、すみちゃん役の星由里子以外は、清水由紀、ハヌナ節子という、今までにないメンバーである。
そして、本作で初めて、青大将(田中邦衛)は若大将の引き立て役ではなく、清水由紀という相手がいる“記念すべき”作品である。
もうひとつのポイントは、いつも若大将シリーズでヘマをするマネージャー・江口役は江原達治がキャスティングされていたが、本作だけは二瓶正也がキャスティングされている。
ヨット部が舞台の本作なのに、江原達治は泳げないからだそうだ。
制作側がそう判断したのか、江原達治から出演辞退の申し入れがあったのかはわからないが、普通はいったん役が交代すると、すぐに再交代では観客が戸惑うので、そのまま代わった人が演じるものである。
たとえば、『男はつらいよ』のおいちゃん役は、松村達雄が森川信の後を継いでずっと演じていたが、いったん下條正巳に代わるとずっと下條正巳のままで、松村達雄は別の役でたまに出ることになった。
だから、この時点では、次の作品以降も、そのまま二瓶正也が江口を演じたとしてもおかしくはなかった。
ところが、その次の『海の若大将』(1965年、宝塚映画/東宝)からは、また江原達治が江口を演じている。
どうしてだろうか。
二瓶正也に、当時大きなしくじりがあったという話は聞かない。
やはり、江口のキャラクターには、二瓶正也よりも江原達治の方が合っていたということだろう。
早い話、江口は、若大将の引き立て役でなければならない。
しかし、『ウルトラマン』のイデ隊員役だった二瓶正也は、ドイツ人の血を引く端正な顔立ちで長身である。
そのへんも理由としてあったのではないだろうか。
新鮮なヒロイン
京南大学ヨット部のキャプテン・若大将(加山雄三)は、マネージャーの江口(二瓶正也)との練習航海中に、中里澄子(星由里子)の操るモーターボートに衝突され、ヨットを大破させた。
ヨットの修理費捻出に、若大将たちはダンス・パーティを計画。
券を売り歩くうち、化粧品会社の宣伝課に澄ちゃん(星由里子)と再会する。
そして、ヨットの修理費が稼げずに困っていた時に登場するのが、お馴染み青大将(田中邦衛)。
パーティが盛会だったのは、ヨット部入りを条件に青大将が券を買い占めたからである。
若大将の家、すき焼き田能久では、青大将がヨット部員に持ってきた馬肉を、祖母・りき(飯田蝶子)が板前(藤木悠)の目を盗んで、極上の牛肉はヨット部へ、馬肉は上客(清水元)にすり替えてしまう。
それだけでなく、大学の前期試験で青大将は、若大将に「答案を見せて欲しい」と頼み、若大将が見せたところ、教授(平田昭彦)にバレてしまい無期限停学。
大学に呼び出された若大将の父・牛太郎(有島一郎)は、例によって若大将を勘当する。
毎回お馴染みの勘当シーンである。
一方、今回の青大将の父親は三井弘次。だったらハワイの大学の編入試験を受けろと青大将に勧める。
息子の青大将からは、若大将が答案を見たと聞いていたが、青大将は父親の手配で編入試験を受けたハワイの大学でもカンニングを行ったことで、父親はやっと自分の息子が悪かったと気づき、若大将に、ハワイに青大将を連れ戻しに行ってほしいと頼む。
人のよい若大将は、言われたとおりハワイに赴く。
そこで登場するのが3人のヒロイン。
まずは、青大将が世話になっているはずの古谷家を訪ねる。
ハワイでの事業が成功した古屋老人(左卜全)の娘婿・上田(上原謙)の一人娘であるジェーン(ハヌナ節子)である。
そこには青大将はおらず、しかもパスポートをなくしてがっかりしていると、化粧品の宣伝のためハワイにきていた澄ちゃんと、同僚の夏子(清水由記)と会う。
若大将は、すみちゃん(星由里子)と夏子(清水由記)の宿で飯をたらふくごちそうになる。
ハヌナ節子は、森繁久彌の社長シリーズである『社長外遊記』『続・社長外遊記』にも出演。
これは、同作も同じ時期に同時ロケを行ったから実現したものである。
清水由記は、クレージー映画や社長シリーズの端役で何作か顔を出していますが、本作は大抜擢である。
ジェーン(ハヌナ節子)のことを考えて、古屋老人(左卜全)や娘婿・上田(上原謙)は、若大将にハワイに残るように勧める。
しかし、若大将はそれを辞して帰国する。
クライマックスは、例によってヨットの大会。もちろん若大将は優勝する。
今回も予想を裏切らない結末で、あまり難しいことを考えずに楽しめる明るい娯楽作品である。