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『スター誕生!』について「愛しの70年代アイドル26人秘蔵写真」という週刊誌記事でそのエポックメイキングな価値を改めて確認

『スター誕生!』について、「愛しの70年代アイドル26人秘蔵写真」という週刊誌の記事でそのエポックメイキングな価値を改めて確認

『スター誕生!』について、「愛しの70年代アイドル26人秘蔵写真」という週刊誌の記事でそのエポックメイキングな価値を改めて確認した。1970年代は、アイドルの質や芸能界の仕組みが変わっていった時期。『スター誕生!』がその契機となったといえる。

70年代の象徴は“花の中三トリオ”だった

部屋の片付けをしていたら、『週刊大衆』(2013年3月11日号)という週刊誌が出てきた。

そこには、70年代アイドルの当時の写真を集めた「愛しの70年代アイドル26人秘蔵写真」という特集が、カラーページに掲載されている。

そういえば、新聞の広告を見て、どうせたいした記事ではないのだろうけど、と思いながらも、「70年代」という文字につられて、つい買ってしまったことを思い出した。

扉ページには、花の中三トリオと言われたスタ誕3人娘(森昌子、桜田淳子、山口百恵)が、次の見開きにはキャンディーズ、ピンク・レディーと、その前の3人娘といわれた天地真理、小柳ルミ子、南沙織が、さらに次の見開きには岩崎宏美、片平なぎさ、石野真子らのスタ誕組、清水由貴子さんを加えて3人娘といわれていた高田みずえと榊原郁恵、浅田美代子、水着姿の浅野ゆう子やアグネス・ラムらが出ている。

ただし、どれも当時の写真だけで本人の取材はなし。

酒井政利さんによるさしさわりのない当時のエピソードが添えられているだけである。

ありあわせの素材でページを埋めた感じだ。

まあ、こういう特集はネタがないときに使うものだということは承知していたが、もしかしたら何か面白い秘話でもあるんじゃないのかって期待したものだ。

ただ、生涯セールスの順ならトップはピンク・レディー、ビジュアルならアグネス・ラムであろうところを、“花の中三トリオ”ことスタ誕3人娘をトップにもってきた編集者のセンスには共鳴できる。

https://www.shiseiweb.co.jp/book/%E3%82%B9%E3%82%BF%E8%AA%95%E4%B8%89%E4%BA%BA%E5%A8%98%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B1otakara%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB

70年代というのは、個々のアイドルすべてがその出身ではなくても、『スター誕生!』(スタ誕)というスカウト番組によって、アイドルの質や芸能界の仕組みが変わっていった時期といえる。

『スター誕生!』とはなんだ

今やテレビ界は、具体的な名前は出さないが、3つの事務所(含系列)によって、出演枠だけでなく番組そのものの編成まで牛耳られているといわれる。

かつては、芸能事務所というと、ナベプロ、つまり渡辺プロダクションがやはりタレントを何百人も抱え、メディアやレコード会社に対して発言力があった。

“ナベプロ帝国”は政財界にも強力なコネクションを持つとされ、批判はタブー視されていた。

そのナベプロがあるとき、日本テレビの人気歌番組である『NTV紅白歌のベストテン』に対抗する裏番組をNETテレビ(現・テレビ朝日)で企画。

それだけでなく、ナベツネ、いやいやナベプロは、「歌のベストテンの放送時間をずらさないのなら、うちのタレントは出演させない」と言い渡してきた。

まあ、今のテレビマンなら、おそらく「はい、わかりました」ということになるのだろうが、当時の人たちは「そうはいくかい」と屈せず、だったらうちも自前のスターを作ればいい、ということでスタートしたスカウト番組が『スター誕生!』といわれる。

予選を勝ち抜いた5~7人の出場者が歌い、会場と審査員の採点によって合格点に達したら決戦大会に進出。

そこで歌った後は、芸能事務所やレコード会社のスカウトマン並んで座っている席に向かってアピール。

採用する意思があれば、会社名が書かれたプラカードがあがる、シビアな「人買い番組」だった。

そこからプロデビューしたのは、森昌子、桜田淳子、山口百恵の「花の中三トリオ」に始まって、ピンクレディー、中森明菜、小泉今日子、岡田有希子までおよそ100人。

この番組の成功によって、ナベプロの帝国的支配が崩れ、ホリプロやサンミュージックといった新興のプロダクションが台頭。

そして、プロダクションとレコード会社、もしくはプロダクション同士の力関係など、芸能界の秩序や価値観が根底から大きく変化したからだ。

その意味で、『スター誕生!』は芸能界、テレビ界にとって革命的な番組だったと私は思う。

『スター誕生!』の功罪をどう見るか

ただし、その一方で厳しい証言をしている関係者の声もある。

当時、番組制作に関わった放送作家の河村シゲル氏は、「スタ誕の罪」として、番組が排出した歌手のほとんどが「大人が楽しむ歌」ではなく「所詮、振り付けだの衣装だので見せるしかなかった」10代、それも中学生、高校生のため、音楽番組がレベルダウンしたと嘆いている。

中村泰士氏もそれが理由で審査員を降板したとし、番組の生みの親とまでいわれている阿久悠氏までもが亡くなる間際に、番組で求めてきた「ヘタでも今まで見たことのない新しい歌手」というコンセプトは間違いだったかもしれないと呟いたという(『テレビ作家たちの50年』)。

関係者が、『スター誕生!』のためにヘタな歌手が歌謡界を席巻して音楽番組の質を変えてしまったと自己批判しているわけだ。

これは当時のファンとしてはショッキングであろう。

もっとも、当時は一視聴者の子供でしかなかった私は、関係者の自己否定には懐疑的だ。

科学哲学者のカール・ポパーはこう言っている。

歴史は科学実験のようにコントロール群を設定した反証実験はできないと。

つまり、もし、「スタ誕」さえなかったら「大人が楽しむ歌」による音楽番組がその後も発展的に継続した、という説もまた合理的に立証はできない。

簡単にいえば、音楽番組がレベルダウンしたのがスタ誕のせいとはいえないということである。

歴史は偶然と必然によって新しいページがめくられる。

「大人が楽しむ歌」が真理なら幾多の行きつ戻りつを繰り返しながらも、やがてそこへ回帰していくはずだが、21世紀のこんにちを見ると、「大人が楽しむ歌」どころか、歌番組そのものがなくなり、話題になるのはAKB商法である。

つまり、「大人が楽しむ歌」とは正反対にますますマニア化しているのだ。

時は移ろい業界も生き物。

善し悪しの問題ではなく、歌謡界の新しい時代の流れを『スター誕生!』が作ったということではないかと思われる。

時は移ろうもの

話を戻すと、次の見開きには関連として、現在の林寛子、あべ静江、大場久美子の「スペシャル・ライブ」取材とインタビューページになっている。

この中では、あべ静江さんが、少し変わってしまったかな。

見出しは、「昔と変わらぬ歌声にファンが大熱狂!」と書かれていますが、いくら本人インタビューが入っていてもこれでは……という感じ。

山口百恵さんのように引退した方もおられるし、全員「当時」の思い出だけでもよかったような気がした。

以上、『スター誕生!』について、「愛しの70年代アイドル26人秘蔵写真」という週刊誌の記事でそのエポックメイキングな価値を改めて確認した、でした。


日本テレビ SPECIAL PRESENTS『スター誕生! CD&DVD-BOX』 – 森昌子, 桜田淳子, 山口百恵, 岩崎宏美, ピンク・レディー, 小泉今日子, 中森明菜, 萩本欽一


楽譜 KA72 花の中三トリオ☆メドレー(Gr.2)(金管5重奏) 歌謡シリーズ/編成:Trumpet.2/Horn.1/Trombone.1/Tuba.1 – 楽譜ネッツ

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